遙か夢参
□酔っ払い!
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厠に行ってくると言って部屋を出たのはついさっきだったはずだ。
それなのに。
「ちょっと将臣くん! どうして名無しさんちゃんがこんなにべろべろになってるんだい!?」
「あっはっは。……わりぃ、そこまで弱いと思わなかったんだよ」
「うーん…」
ばつの悪そうな将臣くんと素知らぬ顔で酒をたしなむ弁慶たちに全力で脱力しつつ、オレは真っ赤な顔をしてソファに顔を伏せた名無しさんちゃんの肩を揺すった。
「名無しさんちゃ〜んっ! 自分の家に戻らないとまずいよ、ねぇ」
「うー…ん…る、さい・・・・・・」
「無理だろ、そいつ。寝かせとけよ。っていうかお前の部屋連れてったらいいじゃんか」
邪険に手を払われて地味にショックを受けていたら将臣くんに軽くそんな風に言われてオレはきっと彼を睨んだ。
「簡単に言うけど無理だってば!」
断固拒否、とばかりに声を上げたらくんっと上着のすそを引っ張られた。
「え…」
「わ、たし・・・・・・嫌い、です、か・・・・・・?」
「っ」
さっきと打って変わって切なげに眼をうるませて見上げてくる名無しさんちゃんに、心臓がうるさく高鳴った。
「き、嫌いとかじゃなくてさ〜…」
そもそも、こちらの洋服が露出が激しいのが悪いんだと思うんだよね。
今だって太腿が露わになってるし……っ!
弱り切っていると、酒で目のすわった名無しさんちゃんがむむむっと口をへし曲げて自分の服に手をかけた。
「名無しさんちゃん!?」
「お、ストリップ」
意味が分からない言葉を吐く将臣くんをしり目に名無しさんちゃんがぐいっと上の服を脱ごうとした。
「駄目! だめだめだめだめだめだってば!!」
慌ててそれを止めて服を押さえるけど「脱ぐったら脱ぐのーーーー!」なんて駄々をこねた名無しさんちゃんの力に押し負けそうになった。
このままじゃほんとにこの子脱ぐ気だ……っ!
その事実に慌てて、オレは暴れる彼女を無理に腕に閉じ込めるとさっと抱き上げた。
「わ、たかーい・・・・・・」
「そりゃよかったね。じゃあ将臣くん、お言葉に甘えてオレは部屋に戻るからっ!」
噛みつくようにそう言って、爆笑した他の人たちをリビングに残したままオレは自分に割り振られた部屋に戻った。
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