遥か夢

□手放せない…
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「……名無しさん様、食事です」


「ありがと、銀」





 私はまた泰衡さんのもとに戻っていた。


 戻れと言われたわけでも戻っていいかと聞いたわけでもないけれど。


 戻るときに、望美ちゃんに初めて会った。

 望美ちゃんはすごく嬉しそうに笑ってて、私と初めて会うわけじゃないんだな、と思っていたら







「泰衡さん、自分の近くにいると危なからって理由で名無しさんさんを屋敷から遠ざけたんだと思います。九郎さんが無理やり泰衡さんを名無しさんさんのところに連れてきたときに一緒にいたんですけど、すごく後悔した顔してたから……間に合ってよかったです」








そう言って、涙ぐんだ。

……望美ちゃんが、どんな運命を見てきたのか私は知らないけど、この子はきっと泰衡さんがどこかで死ぬ運命も、私がどこかで死ぬ運命も見てきたんだなと思った。



「……ありがとう。ほんとうに、ありがとう、望美ちゃん」


私はこの運命しか知らないけど、でも、この運命にたどりついてくれて、ありがとう。

























そうして私は泰衡さんの屋敷に戻ったわけだけど、まだ泰衡さんには会えていない。

私の身体がまだ万全じゃないのもあるんだけど……。




やっぱりここにいちゃいけないのかな?真剣にこの屋敷を出ることを考えた方がいいのかもしれない。













後悔、しただなんて……泰衡さんが?

やさしい人だから、私のことを死なせちゃいけないと思っただけだと思う。


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