その他夢

□小猿と鬼教官の恋物語7
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泣き腫らすほど泣いた次の日、隊内には私と手塚くんが付き合っているという噂がまことしやかに囁かれていた。




















その日は朝から体調が最悪だった。




生理痛なんてくそくらえ。




最近風邪で体調を崩したばかりだし、こんなのでへばっていられない。





訓練だしとにかくやらなきゃと思って必死でついていく。




郁は今日は代休で休みだ。それなのに女子隊員として遅れを取るわけにはいかない。




「……おい、顔色悪いぞ。大丈夫か?」




「……大丈夫」





心配そうに声をかけてくれる手塚くんに小さく笑みを返す。


でも嘘だ。



今すぐにでもベッドで寝ころびたいくらいにお腹が痛い。




でもやらなきゃ。





だって……大切な部下だと思ってもらってるのに、その枠からも外されたら今の私は生きていけるかわからない。






心配そうな手塚くんが自分のポジションへと帰って行ったのと入れ違いに私の傍で足音が止まった。









「体調が悪いのか?」




その心配そうな優しい声に私の涙腺が揺れた。




やめて、話しかけないで……。




……やばい……意識がもうろうとする。





ベンチに腰かけた私の足下に跪くと堂上教官が顔を覗き込んできた。












「……顔色が悪いな。熱は……」





「や……っ」





額に伸ばされた手を、反射的に払ってしまった






「あ……」





私もショックだった。






でも、それ以上に信じられないと驚く堂上教官の顔。



その顔を見てさらに傷つく。





「あ、の……すみませ……」






ああ、どうして私はいつもこうなんだろう。
帰る場所になると言ってくれた。





それだけでも十分すぎるのに。




郁と両想いになることを祝わないといけないのに。




大切な人の幸せを、喜べないなんて。


















「……っ」





ああ…お腹痛い。


腰痛い。



気持ち悪い。


指先が冷たい。



……泣きたい。




「……手塚!」





「はい」





「こいつを医務室に連れて行ってやれ」





――――突き放された。



目の前が真っ暗になる。




この人の手を払ったのは自分なのに。



そしてあの噂を知られているような感じなのもきつかった。




「……おい」





かがんで顔を覗き込んだ手塚に焦点が合わない。





ぼうっとしていると、手塚がぽんぽんと私の頭を叩いた。





「堂上教官」



「なんだ?」




「俺では無理です。役者が違う」



「……どういう意味だ?」




怪訝な顔をする堂上教官に、手塚が近づいて何かを耳打ちした。






驚いた顔をして私を見た堂上教官の視線を感じていると、彼は表情を厳しくして私に近づいた。





そしてひょいと私を抱き上げる。





「……っ?」





「少し我慢しろ」






ゆるぎない、がっしりとした体躯。



いつもながら頼りがいのあるその人の腕に、私は再び涙を誘われた。


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