その他夢
□小猿と鬼教官の恋物語4
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「そういえば、名無しさんは休暇の間実家に帰んないの?」
「ん? 帰らないよ」
「どして?」
「だって帰る場所ないから」
さらりと言った言葉に周りのみんなが言葉を失った。
「ない、って……え?」
郁がキャパシティを超えたみたいで強張った顔で首を傾げた。
その頭をよしよしと撫でながら私はにこりと笑う。
「私みなしごでね、孤児院で育ったんだー。育ててくれた人たちもお年だったから何年か前に亡くなられたし。
だから……お?」
言い終わるかどうかというところで、郁にがばりと抱き着かれた。
それと同時に四方八方から伸びてきた手が私の頭をくしゃくしゃと撫でまわす。
「……ふふ」
ああ、と思った。
優しい人たちだ。
同情だけでなく、愛情まで分け与えてくれる。
ああ、好きだなぁと思うんだ。
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