その他夢
□甘やかして
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「はい、お茶」
「あ、ありがとうございます」
今日も先に淹れられてしまった、と思いながら私はありがたくお茶を受け取った。
「どうかしたかい?」
「ええと……楸瑛様の気が付くところに感心してたと言いますか……落ち込んでたといいますか」
「そんなこと」
くすりと笑みを漏らして楸瑛様が素敵な笑顔を向けてくれた。
「私が好きでやっているんだ。甘えてくれていいんだよ。そもそも君はもっとわがままを言ってくれてもいいくらいなのに」
にこりと微笑まれて、やっぱり自分には勿体ないくらい素敵な人だと再認識しながら、私はもごもごと言い募った。
「あの、楸瑛様が私を甘やかしてくれるのはすごーく嬉しいんですけど、でもそれにあぐらをかくような真似はしたくないなって」
「うん?」
「なんというか……してくれるからってそれを当たり前にしたくないって言うか。嬉しいと思ったらちゃんとそれを伝えて、有難いって思ったらありがとうって言える関係がいいんです。……こういうのって、面倒くさいですか?」
恐る恐る彼を見上げると、彼は面白そうな顔で頭を振った。
「いや、いい関係だと思う。それにそんな風に言ってくれる君がとても嬉しくて、可愛いと思うよ」
「……またそうやって甘やかす」
ぷくんと頬を膨らませると楸瑛様はおかしそうにつついて「甘やかしているわけじゃないんだけどね」と言い置いて卓の上に肘をついた。
「ただ君が好きだなと思っただけさ」
なんでもないようにそう言われて、私は頬が一気に熱を持つのを感じた。
(あなたにそう言ってもらえる幸せ)
2012/1/6