乙女ゲーム夢2
□ひとめぼれ
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一目惚れなんて自分がすると思ってなかったのに。
「あ、いらっしゃーい! 今日は何の花にする? やっぱり俺かな?」
ひまわりみたいな明るい笑顔に、私は惹かれてしまった。
「こんばんは、結城さん」
「こんばんはー! もしかして、俺に会いたくなっちゃった?」
私の心を見透かしたような結城さんの言葉に顔がほてる。
「もう! 仕事帰りに寄らせてもらったんです!」
「そっか。そういえば何のお仕事してるんだっけ?」
邪気なく問いかけられて私は、ぐっとつまった。
「……」
「言えないお仕事、とか?」
「編集のお仕事を……」
語尾をあいまいに濁して乾いた笑みをもらす。
どんな本を編集してるかなんて言えませんとも!
「編集! すごいね〜」
「あ、あのそれで! 今日は職場に持って行く用ではないので、何か鉢植えのものがほしいな、と思いまして!」
話を逸らそうという気で一気に言い切ると、結城さんは目を丸くして私の逸らしに乗ってくれた。
「どんなサイズのものがいいかな〜? 小さいのがいいならサボテンとかどう?」
他にもいろいろあるんだよ〜、なんて言いながら説明してくれる声にときめき、花を愛しそうに見つめる横顔に見とれた。
(いつかこの人が私を見てくれればいいと思って)
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