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□育んで
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【初夜】

男女の営みとはどういうものなのだろうか?

みな、こういった風に優しく触れてくれるものなのだろうか。



こんな、宝物に触れるように?




「ん・・・・・・」



優しく寝台に押し倒されて、なだめるように髪を撫で頬や額に口づけてくれる。


まるでもうすでに愛されているのだと錯覚させるような優しさだった。



「出来る限り優しくするよう努めるが、怖かったら言ってくれ」



気遣いがにじむその声に、私は小さくうなづいた。

体が緊張で強張っていることはすでにお見通しなのだろう。



もたつくこともなく衣服をすべて脱がされ、玄徳さんもまた衣服を脱ぎ去った。



「・・・・・・」



服の下から現れた男性の体。


ほどよく筋肉が付き、ところどころ傷痕もあるが逞しい体だった。



「んっ」


再び唇が重ねられる。

先ほど触れあうだけだったのとは違う、舌を絡め吸われる。



「ん、んふ……っ」



「甘い、な」

「は……っ」


やっと唇は離れたものの、飲み込み切れなかった唾液がだらしくなく口の端を伝って落ちる。


「口づけているときは息は鼻でするといい。ずっと息を止めていると酸欠になるぞ」


少しおかしそうに言われて、私は必死で頷いた。


恥ずかしさでどうにかなってしまいそうで、ただただ優しいその手の感触を追う。


鎖骨のあたりに柔らかい唇が押し当てられて、時折濡れた……舌が舐めるように這う。
かと思えば軽く歯を当てられ吸い付かれて、痛みにぴくりと震えるとなだめるように舌で撫でられる。



「ん、ふ……っ」


同時に二つの乳房を包み込まれ、やわやわと揉みし抱かれる。

自分以外に触れるもののいなかった場所に、今日初めて会った……それも男の人に触れられている。

明確な目的をもって動く手に、どこか焦りを覚えて。



でも、と思う。



―――この人は、私の旦那様になった人。




「かわいいな……」



小さく漏らされた言葉の愛しげな響きにどきんと胸が高鳴った。


ふと見ると、さっきまで私の反応をただうかがいながら手を進めていたのに、今はどこか熱に浮かされたように私の胸を弄ぶ。


「ぁ……!」


「気持ち、いいか?」


胸の頂を指で擦られ、つまみあげられたことに驚いて声をあげた。
でも気持ちいいのかと聞かれて……この動作に気持ち良さが伴うものなのだと思えば、そうなのかもしれない。

少し戸惑いながらも頷けば、玄徳さんは汗のにじむ顔でかすかに笑ってくれた。


「ぁ、ん……っ、んん、ん……っ」


なんども指で擦られ、押しつぶされ、つままれる。


つまんだままくりくりと捻じられると背筋を何かが這い上がって腰がうずく。

漏れ出る声を抑えようと唇を引き結んでいたのに、玄徳さんはぺろりと私の唇を舐めあげた。




「……っ」


「声を抑えるな、聞かせてくれ……」


「あ……っ、う、ん……っ!」



今まで手で弄んでいた片方の頂を、玄徳さんは口に含んで舌で舐めまわした。
吸ったり噛んだり舐めたりと、くちゅくちゅと音を立ててされるとなんとなしに恥ずかしい。

そして……腰が疼く。


もっと、とはしたなくも胸をつきだしそうになって、でもそれを堪えると腰がもじもじと動いてしまう。


「ふ……っ」


どうしよう、どうすればいいのだろう。

たしかに気持ちいいと思う。

でも・・・・・・もどかしいとも思う。




「ふ……濡れてきた、か」



「きゃあ! ……え?」


今まで誰にも……ほとんど自分でも触れたことも見たこともない場所を、指で擦られる。

ぬるりとした感触に、最初は玄徳さんが何かをかけるか塗るかしたのかと考えて……さっきの玄徳さんの言葉を思い出した。



『濡れてきた、か』



「……っ!」


もしかして、自分の身の内からあふれ出た?


そう気づいた瞬間、これまでにない羞恥に顔が真っ赤になるのを感じて、私は泣きそうになりながら顔を隠した。


「こら、隠すな……どうした? 怖くなったか?」



「ち、が……私、はしたな……っ!」


「はしたない?」


不思議そうな玄徳さんの声に、はしたないと嫌われてはいないのかもしれないと私はそろりと顔を隠した手をどけた。



「だ、って……気持ち、いいから……?」


気持ちいいから、慎みなく秘めた場所が濡れてしまったのかとそう思って羞恥に顔を赤くしたのに。

玄徳さんはさもおかしそうに笑った。



「大丈夫だ。俺は嬉しい」


「嬉しい?」


「俺を拒まず、俺に感じてくれている。男として……夫としてこれ以上に嬉しいことはないぞ」


「・・・・・・悪いことじゃ、ないですか?」


「いいことだ。きっとすぐに解れて俺を迎え入れてくれる」


またなだめるように唇や頬に口づけられる。

それが嬉しくて、私ははにかみながら微笑んだ。



「ん……っ」


膝を立てられて、太腿をぐっと割り開かれる。

恥ずかしい、と思ったけれど玄徳さんを受け入れることを彼が喜ぶのなら拒むことは出来なかった。
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