金色のコルダ夢

□教師と生徒
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金澤先生に告白されたのは卒業直前だった。




たまにラーメンを食べに連れて行ってもらえたり、行きつけのバーに連れて行ってもらえたり・・・・・・時折ベッドを共にする。でも付き合ってはいないあいまいな関係。

それに終止符を打ったのは金澤先生だ。















『そろそろ卒業だなー』


『ですよー。先生、寂しくなりますね。こんなかわいい生徒がいなくなっちゃって』


『・・・・・・』


『あ、でもすぐに新しく生徒が入ってくるし意外と寂しくないかもですね』


『寂しい』


『え……』


『お前がいないと、寂しい。すごく』


『金澤せんせ・・・・・・?』



『俺は、お前さんが好きだよ』



まっすぐに目を見て伝えられた気持ちに胸がざわついた。




























考えさせてほしい、と返事を先延ばしにして私は今日も音楽室の戸を開ける。

でも、それも今日で最後だ。



「金澤先生」


「お、来たか。おめでとさん。明日で卒業だな」



トレードマークだったタバコを辞め、それ以外はいつもの金澤先生だ。

でもそれなりに緊張しているのはその様子からうかがえた。


でも。




「やっぱりダメです……」



「何が?」



「だってあたしのどこを好きになってもらえたかわかんないし……」



「そりゃお前……」



「だ、だってこんなに歳離れてるのに……わかんない……自信ない、です」


徐々に声が小さくなって俯いてしまう。


金澤先生ががしがしと頭をかきながら私に一歩近づいた。



「ばぁか。困ったことに俺がちょっと若い精神持ってるだけだろうが」


「…………ちょっと?」


「こらそこ突っ込むな」


「だって……」


「だってもクソもねぇよ。俺はお前が好きだ。それでいいじゃねぇか」


一瞬ためらってから髪に手が触れる。

よしよしと撫でられて私は自分が変な顔をするのがわかった。




「だ、………それじゃあ私の若さが好きみたいじゃないですか……?」



「好きだぜ?お前の若さ」



「……変態」




「こら。若い子が好きなのとお前の若さが好きなのとは全然違うだろうが」



「あ」




「あじゃねぇよ、まったく………いいか? 俺はそのお前の若さ故のうだうだした素直さが好きなんだ」




「……けど」



存外私もしつこい。



「まだあんのか?」


「……それに……さ、支える自信ない……です」


「…………」


「………」


「お前何言ってんだ……?」


「っ」


怒られる!

ため息まじりに吐き出された言葉に怯えてびくりと肩が震える。



その震えた肩を抱き寄せて耳元に囁きかけられる。




「……俺がまだ現役だって……お前が一番良くわかってんじゃねぇのか…………?」




「っ!!」


背筋を甘い痺れが這上がり



腰にきた。



「だ、だか、だから……」




確かに彼がこちらが支える必要のないほど強く逞しいと知っている。けれども不安になるのだ。甘えるばかりでいいのか。自分は与えられるばかりで何も返していないのに。



好きだけど、好きだから出る不安だった。



「わぁってるよ!」



「へ?」


「……甘えろ」



遠慮なくぎゅうっと抱きしめられて、恐る恐るその背中に手を回す。




「・・・・・・好き、です・・・・・・好きなんです・・・・・・あいまいな関係でも文句が言えないくらい、すごく好き・・・・・・」





「・・・・・・知ってる。あいまいにしてて悪かったよ…反省してる。だから、お前のこれからの一生を・・・・・・全部俺にくれ」




2012/11/4
 

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