短い小話+ブラコン夢
□湯上り
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お風呂上りの景持さんに、負けた、と思った。
「景持さん、ずるいですよね」
唐突に言いだした私に景持さんはわずかに動きを止めた。
「何が、でしょうか?」
顔がわずかに引きつっているのは多分私の声に責める響きを感じたからだと思う。
「絶対私より色気ある」
「え」
濡れた髪を無造作に上げて、うなじに後れ毛。
上気した肌はわずかに赤みがかっていて。
「・・・・・・むー」
「・・・・・・私よりもあなたの方がよほどそそられる顔をする時があると思いますよ?」
きゅっと手を握られても機嫌は直らない。
けど。
「わっ」
握った手をぐっと引っ張られて布団の上の景持さんの膝の上にぽふりと転がされて、そのままのしかかられた。
着物の合わせが乱れてちらりと見える胸元がさらに色気を主張してくる。
「っ」
「こんな風に」
「ちょ」
するりと手を絡められて。
膝を割られる。
着物の裾が割れて素足と素足が触れあう。
まずい、と頭の奥で警鐘がなるのに景持さんの唇がなぞるように首筋に這わされて体から力が抜けてしまった。
「ん……っ」
「今、自分がどんな顔をしているかわかってますか?」
「どんな、て・・・・・・」
「そうですね。俺の理性を吹っ飛ばそうとするような、そんな・・・・・・色気の匂い立つような顔でしょうか」
艶を帯びた声が耳をくすぐって、ぴちゃりと舌が耳を舐め上げた。
「や、ぁ……」
「ね? 俺よりもあなたの方がよほど色気がありますよ」
にこ、と笑った顔のまま唇が降りてきて、なんとなく負けた気分になりながら私はその口づけを甘受した。
(湯上り)
2017/11/08