短い小話+ブラコン夢

□夫婦の時間
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神牙と呼ばれる、月牙族が根付く世界。





気づけば、そんな、自分の常識を超える場所で目が覚めて、私はたまたま上杉謙信と名乗る人狼に拾ってもらった。










「謙信さん、そろそろ休まないと、明日に響きますよ」





「ああ。もう少し、な」




灯りをともして執務を続ける謙信さんに胸がぎゅっとなった。





「! ……どうした」




「絶対・・・・・・無事に帰ってきてくださいね」






「・・・・・・我が妻は心配性のようだ」






わずかにからかうような声音に背中に擦りつけた頭を動かすと、謙信さんは体をずらして私を真正面から抱きしめた。





「・・・・・案ずるな。私は、お前を悲しませるようなことはせん」




ぎゅっと力を込める腕に。




謙信さんの香りに。





「・・・・・・上杉領のために尽力してる謙信さんが好きだから・・・・・・好き、だけど……」







彼の匂いのする和室。




彼がいると温かく安心する部屋なのに、彼がいなくなった途端に、広く寂しく寒く感じる。




景勝くんや景持さん、景家さん、兼続くんたちも全員いなくなってしまうから。

余計に寂しいのかも知れないけれど。








「名無しさん」





名前を呼ぶとともに指先が頬をかすめる。





そっと顎を上げて唇が重なる。




「・・・・・・謙信さんはずるい。いつも口づけで私のことを黙らせようとするんだから」




ぷく、と頬を膨らませると、謙信さんが目尻にしわを寄せておかしそうに笑った。




「・・・・・・絶対、無事に帰ってきてね」





「約束する」




髪を撫でる手の優しさに。




抱きしめる腕の強さに。




安心を覚える。





―――――どうかご無事に。

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