短い小話+ブラコン夢

□宜野座伸元2
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「ハゲそう」





心配そうに呟いたその言葉に場の空気が凍りついた。







おそらくその言葉の矛先であるだろう宜野座伸元はひくりと頬をひくつかせながらなけなしの理性を総動員させて、動じている様子を見せずに顔を上げた。







「・・・・・・今、何か言ったか」





「んー・・・・・・伸元、ハゲそうだなって」




「・・・・・・」




場の空気が再び凍りつく。




視界の端でおろおろしている常守監視官の姿を捉えつつ宜野座はそのまま口元を引き結んだ。




果たして恋人である名無しさんが自分のショックも顧みず何を言い出すのだろう。




時として刃となり鈍器となる彼女の言葉に対する耐性はずいぶんついたつもりだったが今回ばかりはショックがでかい。




―――――そんな風に思われていたのか。






「伸元はさー、いろいろ考えすぎなんだよ。もっと楽に生きれるのにさー」




さらさらと髪を梳く手が、いつもなら心地いいはずなのに今は何故か抜け毛が気になる。




「・・・・・・触るな」




「昔はもっと生え際大丈夫だったのになぁ」




「……ぐ」




早急なセラピーが必要かもしれない。精神的な打撃がでかすぎる。





「征陸さんはすっごくふさふさしてるのに。遺伝じゃないよね。ってことはやっぱり伸元に問題があるんだよねー」




「・・・・・・あー、嬢ちゃん。そこまでにしてやってくれないか。伸元がハゲてようがお前さんは変わらず好きでいてくれるんだろうがな、そこまで言ってやらんとそいつには分からんよ」





「へ?」




「・・・・・・」






「ぎゃはははは! ぎ、ギノさん、ハゲ、ハゲ……ぶふっ!」




「・・・・・・」




「やめとけ、縢」





「ほらぁ、コウちゃんの方がふさふさー!」





縢を止めに入った狡噛に対する名無しさんの言葉に場の空気が三度凍った。





すぅ、と宜野座は息を吸い込み問答無用で名無しさんの体を抱き上げた。



「にゃ!? 何々!? 伸元……やんっ!」




「やかましい! お仕置きだ!」



ぱしりと尻を叩くとその弾力にくらりとする。




常々彼女の体の柔らかさにベッドの上で翻弄されるのは自分の方だが今日はいつも以上に仕置きとしてこちらが翻弄してもいいのではないだろうか。





「あー・・・・・・おい、伸元。ほどほどにな」




「うるさい! あんたに関係ないだろう!」




捨て台詞のように吐き捨てて部屋を出る。



じたばたする恋人の体を押さえつけ、宜野座は自分の妄想をこれから実行に移すべく画策するのだった。



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