三国恋戦記夢
□信じること
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「……」
「何? 人のてのひらじっと見て」
少し怪訝な顔をされて、私は逡巡してからそのてのひらにある火傷の跡に口づけた。
驚く気配を感じながら、孟徳さんの手に唇を這わす。
「……誘ってる?」
「……」
困ったような笑みで聞かれて私は手から唇を離した。
「……誘ってる、わけじゃないけど……でもこの傷見てたらなんか癒したくなって……」
「……かわいいなぁ」
にっこりと微笑んだ孟徳さんはそっと私の頬を撫でた。
決して細くはない。剣を握る武将の手。
大きなその手に、私は恐怖でなく安心感を覚えた。
「……好き、です」
ふわりと微笑んでそう言うと虚をつかれたような顔になって孟徳さんは「もー……」と言いながら顔を伏せた。
どうしたんだろうと思って顔を覗き込もうとすると、ぐいっと首の後ろを引き寄せられて気づけば口づけられていた。
隙間なくぴったり合わさった唇と、熱く濡れた舌が内部を犯す感触に背中を震わせて、私はきゅっと孟徳さんの服を掴んだ。
「ん、んぅ……っ」
「は……っ」
糸を引きながら舌がはなれていって、今度はぎゅっと抱きしめられた。
「孟徳さん?」
「……もー煽んないで。かわいくてもうどうしよ」
何枚も重ねられた衣服越しに感じる体温は、感じにくいはずなのにとても温かい。
もぞもぞと動いて彼の背中に腕を回す。
「……私が二人分信じますから」
「名無しさんちゃん……」
「信じるのが怖いなら、まだ信じなくても大丈夫です」
「……ありがと」
(ちょっとずつあなたを信じる気持ちを養うこと)
2011/9/14