その他夢2

□喧嘩するほど仲がいい
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「ねー、手塚」

「なんだ? …つつくな、聞こえてる」

食堂で一緒にご飯を食べながらぽつりとつぶやいた。




「笠原さんってかっこいいよねー、それに何気にかわいいし」



「はぁ!? お前目おかしいぞ!」



顔いっぱいに「あほか」と書いて顔を上げた手塚に私はむっと口を尖らせた。



「なんでよ!? 笠原さんっていい子だよ?」


「知るか! 俺はあんな甘えたあほは嫌いだ」


「はああ?! 手塚だって甘えたさんじゃん!」



「な……っ! いつ甘えた!? どこで甘えた!?」



「一番最近だったらこの前の土曜日・・・・・・!」



「気のせいだ! お前の感覚が可笑しいんだ! 誰が甘えるとか……っ!」


「自覚ないとかそっちの方がよっぽどですけど!?」


「うっさい! 甘えてなんてない!」



「甘えた!」


「甘えてない!」













「元気だねぇ、手塚と名無しさん」


「・・・甘えたとか甘えてないとか、何をやっとるんだあいつらは」



小さく笑ってぎゃあぎゃあ騒ぐ二人を眺める小牧に、呆れた顔で堂上が返した。




「しかし手塚は笠原以外の女子とはうまく折り合いをつけてるのか」


「元々笠原さんに対して思うところがあるだけで、女子が苦手ってわけでもないでしょ。それにあの二人、秒読みだと思うけど? どっちかが素直になったらすぐ付き合い始めるんじゃない?」



ひょいと肩を竦めた小牧に堂上は「そんなものか」と返しながらぎゃあぎゃあ騒ぐ二人を見た。

その視界の隅にトレーが置かれるのが見えて顔を上げると、柴崎がチェシャ猫のような笑みを浮かべて、やはりあの二人を見ている。



「私の観察物件みーっけ」



「あの二人顔合わせたら言い争いしてない?」


その向かいに座った笠原が「んー?」と首を傾げる。それに向かって、ちっちっちと指を振りながら柴崎はおかしそうに返した。


「甘いわね。あの二人、ケンカばっかりだけど仲いい時はちゃんと仲いいし、思い合ってるのバレバレじゃなーい。あんたもう少し人間観察学んだ方がいいわよ?」


「何をう!?」



むきーっと怒りをあらわにした笠原から視線を逸らして、堂上も地味に凹んだ。

・・・・・・そうか、バレバレだったのか・・・・・・。




「ま、ケンカしてても嫌な感じじゃないし楽しそうだからね。いいんじゃない?」

















「手塚ってば人を見る目ないんだからっ」



「お前に言われたくない! というかある! 人を見る目くらいっ」


憮然とした手塚を、はんっ、と鼻で笑って「どこの誰をもって見る目あるっていうわけよ?」と突っ込んだ。

きっと堂上教官とか堂上教官とか堂上教官とか言ってくるんだろうなって思いながら。




でも。





「お前とか・・・・・・っ!」



言ってからしまったとばかりに口元をぱふりと覆った手塚に目が点になった。





――――私?





きょとんとする私と徐々に顔を真っ赤にしていく手塚。



地雷を踏んだのだと分かる姿に、私の頬も徐々に赤らんでいく。





「ええと、さ・・・・・・」



「・・・・・・なんだ」



「・・・・・・とりあえず場所変えない?」




周りが聞き耳を立てている様子にそう提案すると、是と答えが返ってきて私たちはこそこそと食堂を出る羽目になってしまった。



(ケンカするほど仲がいい)
2013/2/3
 

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