その他夢2

□切実に!
1ページ/1ページ









「うー、大人なんて嫌いだー…」


「なんだ突然」


小首を傾げた恋人に理不尽に恨みがましい視線を送る。


「子供に戻りたい」



「それは困る」



「だってだって、子供の頃って一冊の本をすっごい大切にしてさ、登場人物の名前もちゃんとずっと覚えてて、ストーリーだってそらで言えたじゃない? 今は数をこなす分それが出来なくてさ」



「まぁ……そりゃそうだろう。時間もないし数を読むのに必死になるよな。好きな分余計」



「だからなんだか満たされないの! 好きな本をもっかい読みたいと思っても中々読めなかったり。子供のころは図書館に通ってたのに今は時間がないからお金を使って全部買っちゃったり。増えていくし置き場所なくなるし片っ端から読みたくなるしもうどうしよう・・・・・・みたいな」

「贅沢な悩みだな」


困ったように苦笑されて私はくすんと鼻をならした。



「どうせ贅沢ですよー…」



「ま、その分こうやって大切な相手と過ごすための時間が増えてるんだ。織り込んで諦めろ」



くしゃくしゃとなだめるように髪をかきまぜられて、私は目から鱗が落ちる思いだ。



「堂上くん、いますごくいいこと言ったー・・・・・・」


感心を込めた目で堂上くんを見上げると、ふと彼はふてくされたような顔をして横を向いた。



「・・・・・・その「堂上くん」ってのやめろ。いつまで言うつもりだ?」



むつり、とした顔で明らかに拗ねましたという想いをこめてそっぽを向かれて、私は顔が緩んでしまった。












「―――・・・・・・篤」



そう呼んだ瞬間から徐々に染まり始めた耳の色。


ほんのり赤色になったその耳が愛しくて、吸い寄せられるように口づけた。






2012/11/8
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ