その他夢2

□何年たっても
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友達もいて、授業もあって、決して寂しくもないはずなのに、時折ひどく人恋しくなる時がある。

ケータイを見つめ、メール画面を起こし、さて誰に送ろうかと考えて結局誰にも送れずに、ケータイを閉じる。





寂しい時に、誰かとつながっていたいと思う。

寂しい心をふんわり両手で救い上げてほしいと思うことがある。

でもそれまで、それをわかってもらおうなんて……わかってくれる人なんていないだろうと思っていた。






大学から出てるバスを待っているとき、ぱかりとケータイを開いた。


メール画面を起こして、誰かに連絡を取りたいと思う。


でも用事なんてないし、メールを送ったあと何度もやりとりすることを想像するとひどく面倒くさかった。



――――自分がさみしいくせに。



なんて勝手なんだろう、そう思って、でも衝動を抑えきれずに、アドレス帳の名前を繰っていると。





「名無しさんだっけ?」



「!」


真後ろから声をかけられて驚いて振り向くと、笑顔を浮かべた男の子と仏頂面の男の子がいた。


「えっと……」


確か同じゼミの人だ。
名前は……


「俺は小牧幹久。あっちの仏頂面は堂上篤。一緒のゼミだよね」


「あ、うん」


こくりと頷くと、小牧くんはにっこりと微笑んだ。


「ゼミの課題、一緒にやらない?」


誘われて課題の内容を思い出し、協力体制を取った方がやりやすいことに思い至る。


了承の意を示すと我が意を得たり、とばかりに小牧くんは笑みを深めた。



そして一応ということで連絡先を交換する。




実家なんだ、と電話番号を見つめていると、小牧くんは言い添えた。


「いつでも連絡くれて構わないから」


優しい言葉に笑って答えた。


「ありがとう」


「社交辞令じゃないからね、寂しい時にだって連絡くれて構わないから」


「え……」


何かを見透かしたように言い添えられた言葉に驚いていると、小牧くんの後ろで堂上くんが大きく息をついた。





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