その他夢2

□その心偽りなく
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「余は、秀麗以外を妻にする気はない」



後宮にあがった新しい貴妃に、劉輝はきっぱりと言った。















「秀麗?」





新しい貴妃が知らない名前にことりと首を傾げると、劉輝は厳しい顔のまま「紅貴妃のことだ」と短く言った。




その言葉にこの春に後宮に上がった貴妃のことを思い出した。





「……そこまでお好きなら、なぜ紅貴妃は後宮を辞したのですか?」





その問いかけに劉輝はふと悲しげに視線を落とした。





「……夢のために」




「夢……」





「ああ。だから、余は秀麗以外を妻にしない。そなたがここに来てしまった以上、追い返すことも出来ないが……余に寵愛されようなど思わないでほしい。期待するだけ、無駄なのだ」





譲らない、という強い視線とまっすぐな言葉に、微笑する。




「あなたは、素直な方ですね。裏も表もない。まっすぐな方」





だが、愚直なわけではない。





「私はあなたに寵愛されたいわけではありません。幸いなことに権力争いに関係のあるような家柄でもありません。





――――私は、あなたを支えるためにここにきたのです」





彼女の言葉に劉輝は目を瞠った。







秀麗が……かつての自分に放った言葉と同じ。この言葉もまた真実であると、劉輝は悟った。






彼女の瞳に偽りはなかった。






そこで初めて、劉輝は新しい貴妃自身に興味を持った。






「……そなたの名前は?」





「名無しさんと申します」






にこりと微笑んだその笑顔は秀麗のように輝いてはいなかった。




けれども小さな花が綻んだような美しさがあった。
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