アリス夢
□ケスクセ?4
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「……名無しさん」
「なぁに、グレイ?」
ひそっと声を落としてひきつらせた顔を寄せてくるグレイに笑みを返す。
彼はさらに顔を引き攣らせながら一際声を落として一言。
「これ……パンプキンケーキだろう……」
疑問ではなく確認の言葉に私は笑みを浮かべた。
無言の肯定である。
マンゴーなど嘘っぱちだ。
ナイトメアが食わず嫌いだったがために成功したこれ。
「なぁにをこそこそ話してるんだ!?」
「あ、いえ、その」
思わずしどろもどろになるグレイを睨みつけナイトメアがむっと口を尖らせた。手に持つ皿は綺麗に空っぽである。あんなに野菜が嫌いなナイトメアが文句ひとつ言わず、しかも自発的に完食した。
「……ぬぅ、グレイ!分かるぞ、お前が何を企んでいるのか!」
「っ、ナイトメア様……」
ぎくりと体を強張らせるグレイにナイトメアは情けなくもフォークを掲げ上げてむぅっと文句を言った。
「どーせ私に黙ってまた作ってほしいーとか言っていたんだろう!?ダメだぞ、名無しさん!必ず私にも作ってくれ!!」
「……」
グレイがそっと目元を拭う。
私も苦笑しながらよしよしとナイトメアの頭を撫でた。
「ええ、もちろん。ちゃんと仕事の休憩中にデザートの差し入れをするわ」
だから仕事してね、と一言。
ナイトメアが比較的仕事をさぼることが少なくなって、さらには少し栄養も充実して、いろんな人に(特にグレイに)お礼を言われたのは後日の話。
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