遥か夢
□貴方がすき
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「助かりました、弁慶さん」
にこ、と微笑むと、彼は微かに嘆息して物言いたげにこちらを見た。
「名無しさん……貴方は全く……武器も持たずに町に一人で出てくるなんて……」
「あ……あ〜……ごめんなさいっ!
……だって弁慶さんがいるから大丈夫だと思って部屋に置いてそのまま出たものだから……あ」
呆れられている、と感じてあわてて弁解しようとしたのだが、余計なことまで言ってしまった。
口を押さえて目の前に立つ人を見上げる。
「……ふぅ。やはり、悪いのは僕ですね……」
ため息をついて憂いの多い顔をして視線を下げた弁慶さんに恐くなる。
怒らせてしまった……?
「あの、弁慶さん、私……ごめんなさい……」
しゅんと肩を落とす。
刀を置いて出て来てしまったのは私の責任で弁慶さんは関係ない。なのに責めるようなことを言ってしまった。
それにそもそも考えなしに買い物をしすぎたせいでこんなことになってしまったのだ。……自分の考えなしの行動に落ち込んできた。
と、
「いいえ、僕の方こそすみません。……名無しさんが無事で良かった」
さぁ帰りましょうか、と荷物を持っていない手を差し出された。
「あ、あの」
戸惑って手を握れずにいると優し
く絡めとられる。
「っ!」
「名無しさんの買い物はまだですよね?今度は絶対行きますから、一緒に」
ね、とあの優しい笑顔で微笑まれて、胸の中が温かくなるのを感じながら私はやっぱりこの人のことが好きなのだと思い、こくりとひとつうなづいた。
終わり