遥か夢
□貴方がすき
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「なぁ、お嬢さん、一人なんだろう?どこまで行くんだよ。俺が送ってやるよ」
「……いえ、大丈夫ですから」
しまった。
調子に乗って買い物をしすぎて荷物が重く、道の端で少し休んでいたら声をかけられてしまった。
……断ったが男に引く様子はない。
しかし無視してもきっぱり断っても変に怒りを買いそうだ。
……困った。
さらには刀もつい置いてきてしまった。
……弁慶さんがいれば必要ないと思ってたから。
「遠慮するなって!なぁ、家どこなんだよ?」
「いえ、本当に大丈夫です。……連れもいますから」
「だってここで休んでたじゃないか。連れなんていないんだろ?」
……やはり安易すぎる嘘だったか。
「ほら、持ってやるから」
「ちょっと!」
手に抱えた荷物を取り上げられ、抗議しようと顔をあげたら……蜂蜜色が見えた。
「失礼、彼女の連れは僕です。遅れてすみません、名無しさん」
にこ、と袈裟の下で微笑まれた。
「弁慶さん!」
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