乙女ゲーム夢

□ゆきさんと花屋さん
4ページ/6ページ


シャッターを降ろしてお掃除して、花の手入れをし終えて夜の11時。

「ごめんねえ?まあたこんなに遅くなっちゃった……」

困ったように、脱力したように言うゆきさんにくすりと笑う。

「なんか、いろいろ忙しいのに半日はゆきさん一人でこの店回してるんですから、疲れてるのはゆきさんのほうでしょう?私は大丈夫ですよ」

そう。

彼はどうやら、私にはよく分からないが、副業のようなものもしているらしく。
多忙らしい。

この間バイト中に九条という男が訪ねて来てゆきさんを借りますと言ってバックに引っこんでしまった。

そして必死で一人で回していたところに、ゆきさんではなく九条さんが「手伝います」と出てきたのだ。

ゆきさんはバックの、というよりも店の上にある自宅で缶詰。九条さんはスーツが汚れるのも気にせずに私よりも手際よく接客していた。

「はい。ハーブティです。ゆきさんほど上手にはいれられないけど」

「うわ!うわあ……嬉しいよ!!さっそくいただきます!」

ぱっと目を輝かせられて、もう少しお茶を入れる練習をしようと誓いながら、どきどきと感想を待つ。

「ん!おいしいよ、名無しさんちゃんの気遣いが嬉しいなあ、俺。ありがとう」

にっこりと笑顔が向けられる。

もうそれだけで疲れも吹っ飛ぶというものだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ