三国恋戦記夢

□愛を囁く資格が欲しい
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「玄徳軍には同じ年頃の女性がいないので、お話しできて嬉しいですわ。名無しさん様」




「・・・・・・様、だなんて。気軽に呼んでください。尚香、様」




「・・・・・・では私のことも気軽に呼んでくださいな」



ね、と微笑まれるとそのかわいらしさに同じ女性の私でも頬が火照る。

でも同じくらい劣等感も刺激されて。





「尚香殿、今少しいいだろうか」



「ええ。どうぞ」



「っ」





「・・・・・・お前もいたのか」


部屋に入ってくるなり驚いた顔をされて、私は慌てて席を立った。




「あ…席を外しま・・・・・・」



「いや、いい。すぐに済む」




「玄徳様。昨夜も遅くまで私の部屋にいてくださったのに、根を詰めて仕事をされてはいずれ倒れてしまいますよ」



「あ、ああ…」



―――――遅く、まで・・・・・・。



仲睦まじそうな二人を見た瞬間、絞られるように胃が痛んだ。でもそれ以上に胸が痛い。




「やっぱり、席を外しますね」



「あ、おい…っ」



「あら・・・・・・気を遣わせてしまいましたね」




ぱたん、と扉を閉めて自分の部屋へと歩き出す。



でも数歩も行かないうちに、視界がにじんだ。




―――――もう、やだ・・・・・・。



何が悲しくて好きな人が結婚して幸せそうにしているのを間近に見ていないといけないんだろう。



やだ。


やだ、やだ。



足早に歩いて部屋に戻る。




「……っ!」




うじうじした自分自身も辛くて、でも涙が流れるのに任せて泣いているとしばらくしてからかたりと音がした。




「・・・・・・名無しさん。いるか?」



「っ」



玄徳、さん。



慌てて涙を拭っているとそのまま外から気まずそうな声が要件を告げた。




「花から書簡が来ていてな。お前宛だ」



「花…?」



孟徳軍に好きな相手が出来たのだと言っていた大切な友達。



それにつられて扉を開けると玄徳さんがほっとした顔をして書簡を差し出してくれた。それをそっと受け取ると、怪訝な声とともに玄徳さんの指先が私の頬に触れた。




「お前・・・・・・泣いていたのか? なぜ・・・・・・何か、つらいことでもあったのか?」




「……っ」




それを、あなたが聞くんですか?



そうですね。あなたは知らないから。私がどんな気持ちでいるかなんて知らないから。



再びあふれ出そうになった涙を慌ててとどめ、私は俯いたまま訴えた。




「・・・・・・花に、会いに行きたいです」



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