乙女ゲーム夢4
□ループの末に
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「教科委員とは名ばかりの、呈のいい雑用係ですよね」
「そんなもんだろ。後でコーヒー淹れてやるから頑張れ」
赤ペンで試験用紙にチェックを入れながら苦笑する土方先生に「絶対ですよ」と念押しして私は本棚に収めるべく本の整理をしはじめた。
ある程度好きに片づけていいと言われているから自分が分かりやすいように作家別に直す。
もちろん現代ものと古典は分けて。
「んー・・・・・・あっ」
「どうした?」
思わず弾んだ声を出してしまって口元を押さえたけど遅かった。
驚いた顔で振り向いた土方先生に、それでも私は一気に弾んだ気持ちと声と表情を抑えることが出来ずに手に持った本を掲げて見せた。
「こ、これ! これ土方先生の? 読みましたか?」
「ああ。読み終わった」
「貸してください!」
「お、おお。いいぞ」
面喰ったような土方先生。
でもそんなの関係なかった。
緩みまくる顔を引き締めることも出来ないまま、私はその本を胸に抱えて言い募る。
「この作家さん、すっごく好きで! 出たな出たなって思ってたんですけどハードカバーって高いし場所取るし文庫に落ちるまで我慢だなって思ってて図書室で予約入れたんですけど予約待ちがいっぱいで待ち遠しかったんです! わぁ、わぁ、すごいうれしー・・・・・・教科委員しててよかった」
「ぶ……っ!」
「へ?」
心の底から真剣に喜んでいた中差しこまれた変な音に顔を上げると、土方先生が俯いて肩を震わせて・・・・・・笑っていた。
「・・・・・・笑ってます?」
「……っ! お前、本当に本が好きなんだな」
「! す、好きですよ! 悪いですか!?」
笑いすぎて涙のたまった目で見上げられてなんだか恥ずかしくなった。
照れ隠しに怒るように叫ぶと、土方先生が瞳を和ませて見たことのないくらい優しい顔で笑っていて・・・・・・不覚にも胸が高鳴る。
「悪かねぇよ。むしろ、最近の若者は本なんて読まねぇからな。古典担当の俺としては望ましい限りだ。マンガ読むにも電子書籍だとか読みやがるし……俺はやっぱ紙がいいな。本の匂いとか、紙をめくる指触り、音、読み癖、重み。そういうのがいいよな。ま、電子書籍は電子書籍で便利なんだろうが」
「わ、わかりますわかります! 私も紙の本が好きですっ」
わぁ。この人もかなり本好きの部類だ、と新しい発見に表情が明るくなる。
千鶴、ごめん。この人と話すのちょっと楽しい!
「その作家の本なら俺んちに全部そろってる。作風が似た人のもあるから、良ければ持ってきて貸してやるよ」
「ほんとですか!?」
絶版になったものもあるんだけど、と思って作品名を挙げていくと全部そろってるということで飛び上がりたいほど嬉しくなった。
「ありがとうございます!!!」
「教科委員、やっててよかっただろ?」
悪戯っぽく笑いかけられて私はにっこりと微笑んだ。
「もうすっごく!」
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