その他夢2
□好き、だけど
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笠原さんと堂上くんが抱き合ってたとか、堂上くんが笠原さんを庇ったとか、あの二人の息がぴったりだとか、そういう噂は容赦なく私の耳に飛び込んできて私を苛んだ。
「・・・・・・ねー」
「・・・・・・だから、どうしてここに来るのかな?」
にっこりと笑顔のまま固まった小牧くんの部屋に窓から顔を覗かせつつ私はむぅっと口を尖らせた。
「いいじゃない。そろそろ愚痴くらい付き合ってくれても」
ぷいっと顔を背けて勝手知ったるとばかりにひょいっと部屋の中に入り込んだ。
「ちょ、ダメだよ! 君は仮にも女の子なんだから!」
「仮にもって何よ!? 私女だし!」
「だから駄目なんじゃないか!」
妙に焦る小牧くんの胸倉を掴み降ろして身長差を縮める。
間近でほんの少し苛立ったように眉をしかめた小牧くんを睨みあげつつ、私は小さな声で言い募った。
「…どれだけ隊内であの二人の噂が流れてると思ってるの? 「…堂上は笠原さんを放っておけないだけだよ」って小牧くんは言った。大人げないって言外ににじませて。明らかに堂上くんは笠原さんと過ごす時間の方が多くて彼女に時間も手間も割いてるのに、それでも大人げないって言うの……っ?」
堂上くんならまだしも小牧くんをそう責めるのは間違ってる。
わかっていながら言うしかなくて、胸が苦しくて。
「明日のクリスマスだって、堂上くんたら苦い顔して申し訳なさそうに「いや、ちょっとな。買い物に付き合う約束をしたから、夕方からなら」とか言うんだよ・・・・・・? 私、笠原さんが堂上くんとクリスマスに出かけるって話してたの聞いた後だった。それでも私、怒っちゃいけない? グチっちゃいけない? 私って、そんなに、大人げないかな……っ!?」
ぼろ、と涙が零れ落ちた。
泣くつもりなんてなかったのに。
小牧くんが軽く目を見開いて、そして沈痛そうな面持ちで私の頭を撫でようとした。
でもそれすらも嫌になって私はぱっと顔を背けると「ごめん」と謝った。
「突然来られてこんなこと言われても困るよね。ごめん。どうかしてた、私。帰る」
入ってきた窓から外に出ようと足をかけると「ちょっと待って」と小牧くんに肩をつかまれた。
でもどうしようもなく自分がみじめで仕方がなくて私はその手を振り払おうとした。
「ごめん、もういいから……っ」
「名無しさん、待って……っ」
体格差故に、私の力が負けてしまって小牧くんの引き留める力に体ががくりと傾いた。踏ん張ろうとした足もバランスを崩して―――。
コンコン。
「小牧、入るぞ」
「っ」
「堂上!?」
「・・・・・・」
「……っ!」
ガチャリ、と音がしたのと私と小牧くんがベッドに倒れ込むのは同時だった。
涙でにじむ視界の中音がした方を見ると、ドアノブを持ったまま堂上くんが大きく目を見開いて固まっていて、その後ろで青ざめる手塚くんも見えた。
どうしてそんな顔を、と思っていると「誤解だっ」と平静ではない慌てた声で叫ぶ小牧くんの声が聞こえてふっと視線を上げると青ざめながら態勢を整える小牧くんの姿が間近に見えた。
そしてようやく、自分がどれほどまずい態勢なのかに気づいた。
――――まるで小牧くんに押し倒されたみたいな。
「小牧、お前……っ!」
「不慮の事故だ、堂上!」
「歯を食いしばれ!」
怒声が響いたと同時に小牧くんの胸倉はそれよりも身長の低い堂上くんの手に掴まれその頬にこぶしが振り下ろされそうになった。
「堂上くん……っ」
叫ぶと同時に、真っ向から小牧くんがその攻撃を防いだ。
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