その他夢
□理不尽な独占欲
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「んー・・・・・・」
「名無しさん、あんた最近変じゃない?」
「ん? 何が?」
「恋してるでしょー」
「っ!?」
ばさばさばさ、と手に持っていた会議用の書類をその場に落として私は麻子の顔をまじまじと見た。
「麻子、バカ?」
「ちょっと…ずいぶんな言い草ね! バカとは何よ! それより書類大丈夫?」
「ホッチキスで止めてるから大丈夫。……私が恋する相手なんていた?」
「相手はわかんないけどー、たまに綺麗なかっこして外出してるし、相手はある程度経済力のある年上の男性。しかもインテリ。ど、当たってない?」
にやにやと笑みを浮かべた麻子の顔に私は眉間のしわを増やした。
麻子の言っていることがあたっているのがなんだか悔しい。
「・・・・・・当たってるけど、恋してるわけじゃ……ないわよ。利害関係の一致ってやつ。向こうもまるでそんな気ないしね」
さすがにこの間、別れ際に手を握られた時はどきっとしたけど。
「わかんないわよー? 利害関係の一致っていってもお互い人間だし男と女だし。情にほだされてもおかしくないしー」
本格的に私から情報を聞き出そうと本腰を入れて煽り始めた麻子に、むっと口を曲げる。
やっと拾い集めた書類のしわを伸ばしてもう一度腕に抱える。
「絶対言わないからね」
「ざーんねん。ま、いいけど。ネタはあがってるし」
「・・・・・・はったりやめてよね」
「手塚慧でしょう、会ってるの」
「……っ!」
ばさばさばさ。
―――玄田隊長はともかく堂上教官にどやされる!
そう思いはしても再度落とした書類をそのままに、私は麻子の肩をがしりと掴んだ。
「あんたってほんとにたまにすごい恐ろしいわよね……」
「おっほっほっほ! あたしに隠し事なんてしようとするからよ!」
「その情報網に嫉妬するわ」
「得意分野が名無しさんとは違うのよ。それにしても、実際のところどうなのよ?」
「・・・・・・どうって?」
「好きなの?」
「さっきも言ったじゃない。向こうにそんな気はかけらもないって」
「違う。あんたはどうなの? 好きなの?」
「・・・・・・」
麻子のその問いに、私はあいまいな笑みを浮かべた。
その時点で応えは分かっていただろうけど。