三国恋戦記夢

□いついつまでも貴方と共に
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告げられた伝言に従って集合場所に向かったんだけど……なんで玄徳様がいるんだろう?

何か火急の用でもあったのかな?








「な……っ! 名無しさん、どうしてお前がここに!?」


「え? この時間にここに集合するように言われたんですけど」


「っ! どういうことだ!?」


声を荒げて周りを見回す玄徳様に、青ざめた兵士が声をあげた。




「も、申し訳ございません……っ! 手違いで、芙蓉姫への伝言と名無しさん殿への伝言が行き違ったようで……っ」




「なんだと!?」



「あー……なるほど」




私はすっと目を細めて周りを見回した。



私と花に向けられる、好意とは言えない視線。




信じるに値する証を求める空気。





花にはこの戦の勝利を、私には……。





「名無しさん、急いで花の元へ下が……っ」



「いいえ」





ゆるりと一歩前に馬を進める。






「どうやら、私には武勇を求められているようですから、そのように。花の元にはたしかに芙蓉姫がいるのでしょう? それなら、大丈夫です」






大丈夫。




護衛すると決めた。




私のために、何より孔明のために。





でも、花はきっとまだここでは死なない。




心のどこかで確信があった。







「玄徳様、必ずやあなたの元に勝利を」







どこか唖然とした玄徳様にそう言って微笑みかけた。




私のこの自信満々な態度に、武将たちが虚をつかれたように黙り込んだ。玄徳様も。




しかし立ち直るのは玄徳様が一番早くて。







「・・・・・・よし。いい心意気だ」





玄徳様は不敵に笑うと、号令をかけた。






その号令にしたがって――――走り出す!






「名無しさん、死ぬなよ!」





横を通り過ぎるときにかけられた、声。




私はそちらを向かずに笑みを浮かべた。


「玄徳様も!」
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