三国恋戦記夢
□いついつまでも貴方と共に
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玄徳軍は、主である玄徳様の気性によってかかなり馴染みやすかった。
といってもたぶんそう思っているのはこちらだけで、向こうとしてはまだまだ私たちを警戒しているんだろうけど。
「それにしても、芙蓉姫ってすごく玄徳様が大事なんですね」
感心の意味もこめてそう言うと、芙蓉姫が「何をバカな」という顔をした。
「玄徳軍にいるものはみんな玄徳様を大事に思って慕っているわ」
「ううん、そうじゃなくて。やっぱり夫婦だと違うのかなって思って」
「・・・・・・はぁ!? 誰と誰が夫婦なわけ!?」
「え? だから、玄徳様と芙蓉姫」
「はああ?! なんでそんなことになるのよ!?」
「え? えっと、姫って呼ばれてるし、名前呼び捨てだし……花とも意見が一致してたんだけど……」
おどおどとそう言うと、芙蓉姫が脱力したように肩を落とした。
「あなた天然なのね」
呆れたように芙蓉姫に言われて、私は首を傾げた。
「自然から生まれてきたわけじゃないですよ?」
「あーもー! だからそんなところが天然だって言ってるんじゃないの!!」
「え?え? ご、ごめん、芙蓉姫」
「なんで謝るのよ!?」
「だ、だってなんか怒って……」
きーっと芙蓉姫が怒っているのがなんでなのかわからなくて、私はへにょりと泣きそうになりながらあわあわしていると、後ろからぽんと頭に手を乗せられた。
「何をそんなに怒っているんだ、芙蓉?」
「げ、玄徳様?」
「名無しさんが泣きそうな顔をしているじゃないか」
半ば呆れたように言いながらなだめるようによしよしと頭を撫でられて、なんだか気持ちが落ち着いた。
「も、申し訳ありません、玄徳様。お騒がせして……っ!」
「いや、いいが。どうかしたのか?」
「芙蓉姫に天然って言われたので、自然から生まれてきたわけじゃないですよ、って返したんです」
「ぶ……っ!」
「玄徳様?」
「ぶ、くく……! い、いや……十分お前は天然だと思う……!」
「えー……?」
不満げな顔をすると、私の顔を見た玄徳様がまた吹き出して。
「むぅ、私には父も母も兄もいます」
「あなたねぇ、そういう意味じゃないって……」
「あっはっは! もうやめてくれ! 腹がよじれそうだ」
「えぇー?」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でまわされて、玄徳様が笑い転げた。
呆れていた芙蓉姫もおかしそうに笑い始めて。
そして私もつられて笑い始めた。
「あー、笑った笑った」
「本当です。花もぽーっとしてるけど、あなたも同じくらいね」
「? あ、そうでした。花!」
「ん? 花がどうかしたのか?」
「今度の戦のことです。私は花と一緒に軍鼓の近く……後衛に下がってはいけませんか?」
「ああ、もちろん。そのつもりだった」
「芙蓉姫は、前線で玄徳様と戦うんでしょう?」
「ええ! 元譲軍なんて追い返してやるんだから!」
いきり立つ芙蓉姫に、私は笑顔を向けた。
「花のことは任せてくださいね」