遙か夢弐
□かわいい子……
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白龍の神子の攻撃が私に向かって放たれた。
それを感じながら私はそろそろ終わりのときがやってくるのだと感じていた。
それなのに。
「な……っ!?」
私の前に躍り出た、その影に。
攻撃に身をしならせたその存在に、私はとっさに手を伸ばした。
――触れられないことも忘れて。
私の手をすり抜けて、彼女は地に伏した。
どくどくと流れ出る赤い色の液体にくらりとする。
なんだ、これは……?
これはなんだ!?
「名無しさん……?」
「あま、み、さ……」
力のない瞳が私を見上げている。
「ぶじで…よか……っ」
ふわり。
彼女が微笑んで私に向かって手を伸ばした。
でもそれを掴むことも叶わず……彼女の手は力を喪って地に落ち、瞳は……永遠に閉ざされた。
「……名無しさん?」
「天海……」
白龍の神子が何か言っている?
でもそんなことよりも、私は目の前に倒れ伏す存在を受け入れたくなくて必死だった。
「そんな……部屋にいなさいと、言ったでしょう……? ずっと、部屋にいるようにと……異変があれば……一人逃げ出すようにと……言いつけを、破ったんですか……? 悪い子……なんで、こんなところで…寝てるんです……起きて……かわいい子……起きて、私の名前を呼んで……っ!」
どうして触れられないんだろう?
どうして彼女を抱きしめることが出来ない?
どうして彼女は……。
「天海……」
哀しげに私を呼ぶ声に、ゆるりと視線を上げた。
目の前に倒れ伏す少女の命を奪った、少女。
でも彼女を恨む気にはなれなくて。
「全て……私が、悪いんでしょうね」
ぽつりと呟く。
もう、自分がなんのためにここにいるのかも分からず。
私は目を伏せた。
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