遥か夢

□うっとうしい!
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「うー……!」

 なんで私壁際に追いやられてんの!?







「唸るな」



「唸らせてるのは誰だ!?」




「誰も唸れとは言っていない。…喘いでくれるというなら願ったりだが」




「……!」





 やっぱりむっつり助平じゃないかーーーー!!




「男と女の情事に唸り声は不要だろう?」



「な、な、な!?」



 情事!? 
 情事って言いました!? この人!




「なんだ……俺が相手では不満か?」

「ふ、不満とかそんなんじゃなくってその……!」
 
 てゆかあの展開からなぜこうなった!?







「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」





「!!?」



 にやりと笑いながらそう言われて、私は自分の顔が真っ赤になるのを感じた。





「や、やらしい!」




「なんだ、この意味がわかったのか?」





「っっっ!」



 都々逸でしょ、それ!?




「あ、朝寝がしてみたいとか……!」




「照れるな」




「てれてな…っ」




「…もう黙れ」




「!」



 唇がふれてしまいそうなほど近く……吐息が感じられそうなほど近くで見つめられて胸が高鳴った。




「……本当に嫌ならば押しのけろ。だが抵抗しないならば……」



 大きな骨ばった手が私の手をぎゅっと握った。




「…お前を奪う」



「……高杉さん」




 …そんな風に言われて、抵抗できるはずないよ…。



 顔を赤く染めたままそっと視線をそらすと、手を握る力が強くなった。




「……いいんだな?」



「…好きじゃなければ、あんなに絡まないし……」




 わざわざ怒らせるような真似、しないし……。





「……いい子だ」




 悪役顔とは似合わず、優しく唇がおおわれた。


 ついばむように離れては交わされる口づけに身が震えるのを感じた。




 ……心地いい。



「んぅ……っ」



 でも次第に熱をおびていくその行為に、ゆるく彼の体を押すと名残惜しそうに離れていった。



「息、くるし…っ」



「…すまん……その、嬉しくて、だな……」



「……へ?」



「……加減を忘れた」



 ほんのりと頬を染める高杉さんに、愛しさがこみ上げた。



「……高杉さん……好きです」



「名無しさん……ああ。俺は、愛しているがな」





 愛おしそうに言われて、恥ずかしくなってしまった。


2011/4/10
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