乙女ゲーム夢2

□相反する心・分岐(藤堂夢)
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「やるよ、名無しさん!」

 差し出されたその小さな花束に私は目を丸くした。











「平助くん?」






「夜の巡察の途中でさ、咲いてるのみかけて……前に花もらったじゃん? なんかお礼したいと思ってたけど、俺昼間に外あんまり自由に出れねぇし。これ、綺麗だと思ってさ」





「……」




 そっとその花束を受け取る。



 綺麗……。



 なんだろう……摘んでくれた花の色合いが、まるで平助くん見たいに私に元気を与えてくれる気がした。








「……えと……嬉しくなかったか?」




 不安そうに私を見る平助くんに、私ははじめてかもしれない、満面の笑みを浮かべた。




「嬉しい……すごく、嬉しい。平助くん、ありがとう」




「……!」





 なぜか一気に平助くんの顔が赤くなって……むっとした顔をした。





「……お前が、悪いんだからな!」




「え?」



 ぐいっと腕を引き寄せられて見た目よりたくましい腕が支えてくれる。








 不意打ちのキスは、心地いいあたたかさだった。


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