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□あなたの鳥かごにとらわれて
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「・・・・・・苛々する」
ぽつりと呟いて塔の最上階から空を見上げた。
――――本当は。
暗殺業から足を洗ったと言いに来た。
とちって仕事中に足を怪我した。
生活に支障はなくとも、暗殺業をするには致命的な怪我で、足を洗わざるをえなかった。
これごときで悔しい、そう思うと同時に歓びがわきあがったのも無視できなかった。
思い浮かんだのは、あの男の顔。
―――私が唯一、全てを許した男。
会いに来たのだ。
何を言われたかったわけでもない。
ただ、会いたかった。
でも。
――――街中で見かけた彼は、ひどく穏やかな顔で普通の少女と話をしていた。
そんな顔、知らない。
そんな笑顔、知らない。
無性に腹が立って、するつもりもない暗殺業をするふりをして、彼に相対した。
もっとずっと男っぽくなったその姿に。
落ち着いた雰囲気のその姿に。
年月を感じて・・・・・・彼にももう恋人がいるはずだ、と悲しくも合点した。
殺したい。
殺したいほど憎い。
私を忘れたのか。
私ではない女を抱いたのか。
その、体で……っ!
ぎゅ、っと震える手を握りこんで、私はすっと立ち上がった。
―――もう一度だけ。
顔が、見たい。