□05 A -王達の暇潰しV-
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眼鏡を下にずらしたその人と、レンズ越しに目が合う。
頭の良さそうな印象を受けるけれど、インテリ堅物な印象はない。


「すいません、」
「ヨシツネな」
「、ヨシツネ……様…あ!轟」
「…おい、俺のことを忘れてねぇか」
「! わ、忘れてません」
「……じゃあどもんな」


疑わしそうな視線が突き刺さるけれど、「癖です」とかわす。


「…申し訳ないのですが、」
「ああ、悪ィ。あいつら寝ちゃってんだろ?」


何でこの人達はこう頭の回転が早いんだろう。言い切る前に答えを用意してくれる。
まさかさっきまでウノで五枚取りやババ抜きを超ポーカーフェイスでやっていた面子と同じだとは、誰も思わないのではないか。


「俺も、帰るわ」


誰に言うでもなく宣言して立ち上がる雷の王を見上げると、小さな唇が動いた。

…なんて言ったか分からなかったけど。


「お休み、鵺君」
「鵺君オツカレー」
「あぁ、お子様は寝る時間やもんな」
「どうぞええ夢を」
「鵺様、余り炭酸系ばかり飲まれてはいけませんよ」


今は神経衰弱に興じる彼等が、カードから目を離さずに別れの挨拶を送る。


「ああ、またな」



 
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