□07 A -彼は言った、"賭けようか"と。U-
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恥ずかしい台詞をよくもぬけぬけと。
気障な台詞が少しだけ似合っていたなんて、これっぽっちも思ってやらない。
「どうする?」
小さく笑う顔は、自信の現れ。
そんなの分かってたけど。
「いいです、その賭け乗ります!」
ローリスクハイリターン。
誰にとっても16人のリンチよりキス1つの方がずっと容易いハズだ。
でもそれを考える前に思ってしまった。
「自信に溢れた男前をぎゃふんと言わせたらどうなるか」
「え?!何か言った?」
「いえ何も!」
肩越しに後ろの彼らを覗くけど、相変わらず間隔は開かないし縮まらない。このまま家に着けば、昼夜問わず彼らのいい標的だ。
「…………あれ?」
「ん?」
「感じ間違いかもしれませんけど、……風が何体か」
「この程度かよ炎の王ってのは!!」
後ろとの距離を意識し過ぎて、私は大事な事を忘れていた。
そうここは、――RIZEのエリア。
路地の多い、潜むには絶好のエリア。
男の声と共に突然横路から伸びた手に脚を掴まれる。炎の王は一瞬でそれを払い除けてくれたけれど、「走り」において一瞬は相当な時間だ。後ろのメンバーとの距離は瞬く間に縮まった。