□17 C -だから、傍にいたいと願うの-

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「…だから、見て分かんねぇのかっつったろバカ共が」


牙の王の呆れ返った声と態度。
その足元に、屍ニ体。


「てめーバカヤロぉおッ!…知るわけっ、…ぇーだろ、涼ちんが、」





こいつらの総長、なんてよぉ





段々と小さくなっていく声と共に、項垂れるハネッ毛とオニギリ頭。

私を危機一髪助けてくれたのは、コルクを含めたブラストのメンバーだった。
それはもう、彼らには申し訳ないくらいに四方八方からキック、アッパー、エルボーの嵐。


リンチをこんなに間近で見たのに罪悪感がないのは、きっとその原因があんなんだったからだ。


「小鳥ちゃんに触ろうなんて百年早いわよ!」
「うひゃっ」


腕を引かれてぎゅうっと。
ブラスト全体のアンチ小烏丸を代弁するかのように、南君に背を向けたコルクの腕の中で、私は密かにそう思いつつ。
それに負けないくらい密かに、誰にも聞こえてはならないという変な使命感を感じながら、小さなため息を殺した。








ため息の原因なんて、痛い程わかってる。








「小僧ーーっ!特訓やで特訓!!」


そんな私の陰鬱な思考回路を真っ二つに分断させたのは、明るく突き抜けた叫び声だった。
その声の主に、ブラストが道をあける。
さっきまで空の王(仮)をメッタ切りにしていた彼らが!


「なんやぎょーさん男ばっか。むさ苦しいんこの上ないなぁ」


病室を見回して、なかなか失礼な一言。
誰も言い返せないのは、そうだ、この人が。


「…空?」


旧眠りの森 空の王に最も近い男、だったから。


「なんや涼か」
「なんやとは何だよ」
「いくら見た目が女みたいやからってなぁ!邪魔なモンが付いとるやろ邪魔なモンがぁ!」


南君とオニギリ頭君のリンチの最中ずっと、皇杞さんと頭を突き合わせて床に座り込んでいた涼がブラストを掻き分けて出てきた。
その手には、メモ帳とシャーペン。


「なんやコレ?」


あ、私も気になりましたよソレ。
まるきり似合わない組み合わせを、空さんも気にしたのか、車椅子の上で伸びをして中身を覗き見た。
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