□06 A -彼は言った、"賭けようか"と。T-
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少し欠けた月を横目に。
私は引き上げられるように彼に手を引かれていた。
いつもより高い空を一人分の体重を支えながら難なく飛んでゆく体力と能力は、その道の頂点に立つ者にとってはなんてことないらしい。
「………ありがとうございます。わざわざ、」
「またバランスを崩したりしたら大変だからね」
至極可笑しそうに言うものだから、私までその時の恥ずかしい叫び声なんかを思い出してまた赤面してしまった。
「意地悪。」
思わず口を次いで出たのはちょっとした皮肉。そんな皮肉に反応したのか、引かれた手が少しだけ強く握られて。
しまった。
怒らせてしまった、かも。
「……なかなか、良いね“意地悪”って」
「………………えす…?」
って違う!!
相手は王なのに。
この馴染みやすい雰囲気のせいなのか、思ったことをそのまま口にして仕舞うから困る。
「あの。」
「ん?」
「なんで送って呉れようと思ったんですか?」
心意を知りたくて、じっと赤の眸を覗き込む。
けれど、反応は私の望むものではなかった。
「いはい……」