□06 A -彼は言った、"賭けようか"と。T-
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あのお店で働くようになってから、ライダーが纏う一人ひとりの風が違うことに気づいた。
そして私はそれらを区別できる。
ATをやる前は全く意識していなかったけれど、いつの間にか。それが今「彼らだ」と反応していた。
しかも、前後から、左右から、風圧を感じる。
「…16人です」
「!……アタリ、驚いたな。分かるの?」
暗いから見えないけれど、確かに来る。
見えない敵意に少しだけ縮こまると、繋いだ手を引かれ。
肩を寄せられた。
………折角送って呉れると言うのだから、家に着くまで我慢しようとも思ったけれど。
「…は、な、れ、て下さい」
「えー」
この人はホント、何でこの状況で普通なんだ。過度なスキンシップもこのマイペースさも、調子が狂って仕方ない。
「でもそのお願いは聞けないな。ほら、離れないで」
フェアレディアの時の要領で、胸板をぐいぐい押す。ううん、押したはず、だった。
の、はず、なのに何故だか難なく抱き寄せられてて。
目の前が
(この場合、鼻の前、と言うのかも)
…とてつもなく良い匂いに包まれた。