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□俺を置いて逝くな
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奴らに渡すダミーのブツを確認した時点で、先回りした奴らに気付かれており、計画がおじゃんになったと気付いた。


メロに連絡しようと携帯を何度かけても繋がらない。嫌な風景ばかりが浮かび、吐きそうになる。
頼む、間に合ってくれ。お願いだから。


じっとりと嫌な汗を浮かばせ、俺はメロの軌跡を辿る。目敏く壁際に落ちていたメロの携帯を横目で確認し、一層足を速める。



ぴくりと微かな話し声が聞こえ、俺は壁際に潜む。


奴らか?メロはメロはどこだっ!



暗い路地で真剣に目をこらし、様子を伺う。何やら奴らはワゴン車に運び込んでいた。

黒い服に金色の髪のヒトを―――


俺は目を見開き絶望に襲われる。


やめろ、返せ


思考が錯綜し何も考えられない。頭が真っ白になりつつ、やるべきことはわかっていた。
銃口を定めまずは一人。ドサリという鈍い音で周りの者が一斉に銃を構え、辺りを警戒し始める。
早目に事を片付けないと、こちらの分が悪いことは重々承知。また一人。

居場所に気付いた奴らが一斉にこちらに駆け銃を乱射してくる。

頬を掠め、肩を負傷しながら俺は痛みと恐怖を感じなかった。いや感覚が麻痺している。

構わず突進する俺に奴らは怯み、俺は的確に急所を狙い片付けていく。
最後の一人と対峙した時、俺は血だらけになっていた。俺の狂ったような様は十分に悍ましかったんだろう。一人は引き攣った顔をしながら銃を無茶苦茶に乱射するも、俺の一発で果てた。


重い体を引きずりながら俺はメロにすぐさま駆け寄る。

「メロ、メロ!」

相手を抱き抱え、相手の体温のなさに不安が爆発した。

「メロ、嘘だろ……」


相手の顔を寄せ首筋に手を当て脈を探る。いくら首に手を当てても生の音が感じられなかった。

「嘘だ、何かの間違いだ」


悪い夢を見てるんだ。


メロは俺をもう二度と一人にしないって約束したんだ。

違う、違う。
やめろ。



力の限り抱きしめる。鳴咽が洩れた。
メロのいつもの寝顔があるだけ。
なんで温かくないんだ? なんで声が聞こえないんだ?


涙が止まらない。いつも温かいメロが冷たいのが信じられない。

なんで?俺を置いていくの、メロ。

俺をメロの居ない世界に残す気?
ズルすぎるよ、メロ。


途端に撃たれた所から痛みが沸き上がってきた。生きてるから痛い。心も痛すぎた。


施設で一度苦しい別れ方をして、また再会してメロに一生ついてゆくと決めた日から、こうなった時自分の取る行動はわかっていた。

メロの居ない世界に俺は用はない。

メロを寝かせ銃口をこめかみに当てる。メロを見ながら微笑んで。

意を決した時、カチリと間抜けな音がして俺は脱力した。弾切れ……

持っていた弾を一発だけつめ、今度こそしっかり引き金を引く。


メロ、強くなれなくてごめん。
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