Novel FA

□アドレッサンス
1ページ/8ページ




「おっエドワード!弟きてるぜ!」

「はいはいっと……」


「相変わらず仲いいなー!」

にやけて冷やかすフレッチャーを程々にあしらって、鞄を肩にからう。
教室の入口に控え目にアルが立っていた。

「お待たせー」
「ううん。あ、フレッチャーが何か言ってるけど……いいの?」

「あーいいっていいって」

エドワードはけだるそうに手を振ると廊下を歩き出す。

「あっちょっと、兄さーん!」

慌てて追い付くと、兄さんは首を捻っていた。

「……どうだった?今日のテスト」

「んー首が痛い」

「兄さんのことだから余裕だね」


アルが嬉しそうに笑った。





帰路の間、俺らは他愛ない話をする。
先生がどうしたとか、クラスの奴が何をやらかしたとか。


「でさーそいつがさごみ箱をひっくり返し……」
事の顛末を言いながら、ふと見た瞬間のアルがとても辛そうに見えて俺はびっくりした。

「アル……?どうした?」
「……へっ?なっ何が?」

アルはしどろもどろだ。

「なんか……すごく辛そうな顔してたぞ……」


「えっ?僕そんな顔してた!?」

アルは自分の顔に手をやると、首を捻った。


「ん?俺の見間違いか……何か嫌なこと思い出してたとか?」
「い……いや別に……夕焼けの光で……変に見えたんじゃない?」

「そう……か……?」


次は俺が首を捻る番だった。
見えたのは一瞬だったが、アルのあんな表情は初めてな気がして少し動揺してしまった。

そのあとは二人とも無言になり、気付けば家に着いてしまっていた。











二人で作った夕飯を食べながら、俺はぼんやりアルを見ていた。
兄弟というものはとても近い存在だけど、それゆえ何か見えない部分はきっとあるのだろう。最近アルが元気がないというか、大人になったというか、距離を感じるというか。


「に、兄さん……?」

視線に気付いたらしいアルが焦って尋ねた。

「僕の顔に何か……付いてる?」
「んにゃ、何でも」


スプーンを持った手を空中に泳がせながら、にかりと笑うと、アルはつられて薄く微笑んだ。


「そうだ……アル……」
「ん?」

「何か悩み事あるなら遠慮なく言えよ!」

「え?あ、うん……」


それとなく視線を外しながら答えるアルに俺は眉根を寄せた。


やっぱり何かおかしい。



***

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ