Novel DN
□愛棒
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再会したあと。
俺はどうしても言えなかった。
きっとわかっていた。なによりもお互い思っていたことは全く一緒だって気付いてたが。
何かがいつも差し止めた。
二人っきりの時間はそう長くなかったけど、どことなく浮ついた空気だった。重いような甘いような懐かしいような。
同じソファに自然と腰掛けた相手は緊張した面持ち。
「ねぇ……メロ……?」
「…………なンだ?」
横目で睨みながら低い声で返す。嫌な予感がする。
口を開いては閉じる相手を確認して“卑怯にも”逃げようとした自分がいた。腕に力を込めソファから立ち上がろうとする。
「…………明日の準備するから行くぞ……」
すぐにショックを受けた顔でマットがこちらを見つめる。
「……ッ………お願いだから話を聞いてくれ……」
真剣な顔の相手に足元が揺れた気がした。すかさず額をつっぱね、諭す。
「じゃさっさっと言え。馬鹿」
怯んだマットはもじもじと手をこまねる。
本当は聞きたくなかった。絶対に聞きたくなかった。でも相手を完全に無下にできない自分がいる。
「あの、な……お…れ…メロのこと……」
やっと上に上がった視線がまた下を向く。
無言の圧力で畳み掛ける。マットは焦って再び顔をあげた。
「メ…………メロのことが好きだ…………」
わかっていた筈なのにはっとした表情をする。演技か、はたまた本心か。
「もちろん……………………愛してるの意味で………」
段々小さくなる相手の声に、俺はやっぱりうまく対処できないでいた。マットは再び頭を下げて赤面していたが、俺は大声を出して逃げたい一心だった。
駄目だ。駄目だ。駄目だ。
こらえるんだ。
時間がたてばたつほど、逃げられなくなる。
早く対処するんだ。
「……マット?酒でも飲み過ぎたか?」
やっとの思いで相手を嘲笑う。
驚愕した表情でマットは俺を見る。
「違ッ!俺は真剣に……!」
「はいはい。そんな台詞は女に言え。俺は戻る」
相当マットはショックを受けていた。見てみぬ振りをしながら扉をあける。
「メロは俺のこと!」
「は?」
「なんとも思ってないのか…………」
今にも泣き出しそうな顔で叫ぶように尋ねるマット。
「なんとも?仕事のパートナー、相棒だろ?それ以上でも以下でもない」
部屋に入って非情にも扉を閉める。その台詞を聞いてマットがどんな表情をしたか知らない。いや見れなかった。