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□目覚ましハニー
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目覚ましハニー
ガチャリと扉を開くと、部屋内は暗く、どよよんとした重い空気が立ち込めていた。
俺は最大級の溜息をついてから、意を決して中に踏み込んだ。
鼻につく煙草とその他雑種の臭い集合体。ウッと鼻をつまみ一目散に窓へ。
勢いよく全ての窓を開け放ち、やっと一息つけた。くるっと室内に視線を戻すと窓から差し込む光がほこりをもって筋を作っていた。雑種の臭いの原因は食べ散らかしたカップ麺が方々に放置してあることにあった。煙草の吸い殻も溜まるだけ溜まって一切捨ててない。
相変わらずの部屋の様子に絶句しながら言い放つ。
「マット!!!」
「………あ…い?」
やっと人の気配。ソファだろうと思われる家具から人だろうと思われる物体がもぞもぞと動き出す。
「ん〜まだ眠いんだけどぉ」
「つべこべ言ってないで……部屋の掃除しろってなんべん言えばちゃんとするんだ!」
「だってー……見張りってなかなか大変なのよーメロさん?」
「嘘つけ。半分以上ゲーム画面見てるくせに」
それでもぐずるマットに俺は腕組みして鼻をならす。
「こんなに不快感のある部屋はもう一切合切来ない!!!」
未だ起き上がらずソファと思われる家具の上でごろごろ身体を揺らしていたマットがぴたっと動きを止めた。
「……ひどぃ……メロちゃん……」
くすんくすんと泣き真似をするマットにも一切構わない俺。
やがて効果ないと気付くと、もそりと起き上がり近くに寄ってきた。
手の平をぱちんと合わせ、
「……ごめんなさいメロ様。ちゃんと掃除するんで構って下さい」
「…………次また同じことしたら……ないからな?」
「はいっはい!肝に銘じておきます」
マットはぺこぺこと謝りながら再び身体を擦り寄せてきた。顎を俺の肩に乗せながらまたうっとりと眠そうな顔をしている。
「ったく……………………見張りばかりやらせて悪いな……って思ってるから……来てやってるのに」
「んっなになに?」
小声で零した言葉を惚けて聞こえない振りをしたマットだったが、表情を見るにしっかり聞いていたらしい。鼻の下を伸ばしたマットからつい笑みが零れてしまった顔を隠し、ぱっと離れる。
「ほら、軽く片付けろ。朝飯くらい作ってやっから」
「ふぁ〜い」
頭をぽりぽりかきながら、ゆたぁと片し始めるマットを目で追う。やはりまだ目が覚めないらしい。
「……ちゃんと寝らずに何やってんだ」
「んーぅ?……何かなぁ…………メロと妄想エッチ!きゃ!」
…………恋人を殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ。
拳を作った俺を見てマットはいそいそと片付けを再開した。