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□メロとチョコレート工場
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「マット……………………………なぁマット!」
「ん?何?なんか呼んだ?」

音楽を聞いていたイヤホンを外して俺はメロに視線を向けた。


「当たった!」
メロは目を煌めかせながら、感激のあまり肩を震わせているかに見えた。
「何が?」


「ウェンカのチケット!」

「はい……?」


首を傾げれば、メロはかじりかけのチョコレートと黄金のチケットを目の前にずぃと差し出した。

「なにこれ……?」
「なんだよ知らないのかよ!映画一緒に見たじゃんかチョーリーとチョコレート
工場!!!」

相手の勢いに押され目をぱちくりして、やっと合点がいった。メロの大好きなチョコレート工場が舞台の映画だ。本当いうと何回も繰り返して一緒に見ようなんて言うもんだから、俺自体は飽きがきていたレベルだった。チョコレートの川が出て来るところなんてあまりにしつこく巻き戻すので、DVDが擦り減るんじゃないかと心配したくらいだ。

「ああ……あれか……………あのチケットが当たったと?」
メロは瞳の輝きをそのままにこくこくと大きく頷いた。俺はとりあえず相手の頭をよしよしと撫でた。
「よかったな〜メロ。ウェンカチョコ好きだもんな〜」
うんうんとメロは幸せでたまらない様子だ。
「どうする!マット!」
「ん?」
「あんなでかい工場が俺のものになるんだぜ!」
「あーそれは映画見てない人にとっちゃネタバレってやt……」
「チョコレート工場で1番になぅるっ!」
「あれ……なんか変わってな……」
「俺としては薄さがバラエティーにとんだチョコレートなんかいいと思うんだ!
!!」
こうなったメロはもう誰にも止められない。
「あのチョコレートの川が俺のものに!やったぞ!」
「あ……メロでもあれじゃないか……」
深刻そうな俺の声にメロははたと動きを止めた。
「ライバルの子供たちを蹴落として最後まで残らないと……欲望剥き出しじゃ負
けちゃ……」
「はははっ!マット〜何言わせるんだ!俺はワイミーズのナンバー……………ナン……バー…………っ………だぜ!」
少し顔を歪ませながら何とかいうとすぐに自分のペースへと戻る。
「勝ったも当然だろ!誰があんなガキに負けるなど……!あーパッケージはどうするか……!」
最初の状態、工場メロビジョンにすっかり戻ってしまっていた。俺、マット所詮負け犬。
「いっそ特上のチョコなんかいいと思うんだ!!!カカオ流行りだしな!」
メロはさらさら元気だ。
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