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□チョコと煙草
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煙草に火をつけると、煙が一筋立ち上って空をぼやかした。


「嗜好品ってのは……自分が脆く弱くなってる時に与えられたものが習慣づくらしいよ。自論だけど」


「あっそ……」

さもどうでもいいというように背中を合わせて座るメロが言った。

お互い逆の方を向いているけど、声はよく通った。辺りが静かだから。





メロの背中は細いけど引き締まっていて、一つの意思に真っ直ぐ向かう。

ずっと見てきた、と思いたい。
ちょっと離れた間に俺の知らない何を背負った?



「俺が煙草吸い始めたのは……メロが施設出ていった時」


「…………それ告白?」


「そ」



メロは黙ってチョコレイトをかじる。







メロは俺の居ない世界でも大丈夫なんだろうね。羨ましい。恨めしい。



メロが崩れた時に支えてあげる存在になりたかった。俺は大事な時にお留守だった気がする。


「んーチョコなくなったー」



銀紙をくしゃくしゃに丸めて地面に落とす。




「……全く。一人だけ感傷に浸って何ごちゃごちゃ考えてんだ!うぜぇ!ほら行くぞ!」


背中をぽんと叩かれ立ち上がる。



二つの足音が響いて、段々とメロの背中が遠ざかる。



「めろー」


先を歩く相手の背中に早足で抱き着き、肩に顎を乗せる。




「んだよ……ったく」


メロは無駄のない動きで顎を捉らえ唇を重ねてきた。

甘さと苦さがちょうどよく溶け合ってく。


これが俺の最高の嗜好品。





メロ、今度は共に。



「……メロの背中は俺に預けろ」



「は?何を今更。当たり前だろうマット」








 

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