Novel SH

□君とよく似た
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「陛下!陛下!どちらにおられるのでー?」

焦った遠い声が耳に届くが、返事はしない。

僕は自室のバルコニーで空を見つめていた。真っ青ではなく淡い青をたたえた空には季節の変わり目が感じられる。

この感情をどう表現するのかずっと考えていた。安堵感もあり哀しみもあり、寂しくもある。


「陛下!此処におられましたかっ!」

宰相が息切れ気味にバルコニーに飛び込んできて、僕はやっと目線を向ける。


「何かあった?」

「え……あ……いやぁ……陛下のお姿が見えないもので……もしや……と」

宰相は目線を外しつつ、しどろもどろに答えた。何を言いたいのかもなんとなくわかったので、含み笑いをして言葉を続ける。


「僕は大丈夫だよ、問題ない」

視界の端で宰相が胸を撫で下ろすのが見えた。

「行って……しまったのですね?」

「うん、Romanを探しに」


冷静に言えたつもりだったが、心が震えてしまう。
この感情は――きっと我が子を送り出す想いなのかもしれない。期待と哀しみが紙一重で複雑な気分。


イヴェールは春が深まると、Romanを探しに行くと言って僕の前から姿を消してしまった。








「陛下……」

宰相がそっとハンカチーフを差し出すので、自分が泣いていることにやっと気付く。




「ありがとう――」


伝言のハンカチーフに慰められながら、やっと気持ちが落ち着く。


「これもまたRomanですな」


僕は宰相の言葉に力強く頷いて、頬を叩く。彼が彼の物語を探しに行ったように、僕も物語を紡がねばならない。

僕が顔を引き締めると、宰相は心底安心したように微笑んだ。

「それで……その……それはどうされたので?」

「ん?」


宰相は僕の尻尾を指差している。


「ああ!これ?イヴェールとお揃いなんだ!」


「なるほど……お似合いですぞ!」


「でしょーリボンに凝り始めようかとも思っててさー」











――季節は廻り、再び物語は紡がれる。






End

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