Novel SH

□冬の訪れ
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深い暗闇で僕はひたすらもがいている。

もがいてももがいても、進まない歯痒さ。

無力さ。


脱力感が押し寄せて抵抗するのを止める。


苦しい。

逃げたい。

投げ出したい。


嗚呼、誰か――――



















「……ちゃん、Revoちゃん」


うっすら意識が戻ってきて瞳に世界が映る。なんら変わりない僕の乱雑した机。

「じま……?」

「また机で寝ちゃって。根詰めすぎだよ」

じまんぐはふぅと息を吐く。

「気持ちはわからないではないけど……Revoちゃんは自分の信じた道を行けばいいと思うよ」

じまんぐの労いに僕は目線を逸らす。
視線の先には引っ掻いたように落書きされた紙の山。元々そこには音の調べが刻まれていたはずだが、落書きで黒く塗り潰されている。
僕はくしゃりと紙を丸めると肩を震わせた。

「僕がこんなに弱いとは思わなかったよ……大事に育ててきたSoundHorizonも終わりかな……」

「そんなに悲観しなくてもいいじゃない……!」

「メジャーデビューと共に落ちる、よくあるパターンだよ」

「歌い手が変われば音楽は変わる。受け入れ方は人それぞれ。当たり前のことでは?」

僕はコツコツと机を叩く。
SoundHorizon二期の始動。それは僕の納得のいく移行だったが、ファン全員が飲み込んでくれるはずもない。それはわかっていた。

新しいスタートで『少年は剣を……』をリリース。でも予想以上に混乱は大きく、過去を渇望するファンは多かった。

一期が良い。歌姫を戻して。

「ネット上で育ってきたSoundHorizonがネットの口コミに影響されるって皮肉だな」

両手で顔を覆い、ゆっくり深く息を吐く。次の地平線を生み出すのがこんなにも苦しいだなんて。

ある程度あった自信が消えてなくなったように、次を出せば見放されてしまうのではないか。そんな不安がどうしてもついてまわる。
わかっている。そんな心配をしたところで、何にもならないのだと。

ひたすら音楽に向き合って納得のいくものを届けるしかない。

しかし。

浮かんだメロディーは陳腐なもので、歌詞は月並みだ。全てが気にくわない。
僕が紡ぎたかったのは何だったのか。それさえも見失ってしまった。


「まぁRevoちゃんはできる子だって信じてるよ。いいものが生まれる苦しみは君が一番よく知っている」

「じまんぐまで僕にプレッシャーをかけるのか?」

抗議たっぷりの表情を向ける。

「まぁまぁ。肩の力抜いて散歩でもしたら?」


じまんぐは僕の肩を強めに叩き、にこやかに部屋を去って行く。


「まったく……」

うーと僕は背伸びをして外に出た。
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