Novel SH

□陛下好き!僕女の子になる〜!
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幾度目かの冬が訪れる――――





「「陛下っ!」」

「お!姫君たち、こんにちは。今年も冬が来たね」

陛下は笑顔で冬の到来を歓迎します。しかし姫君たちは少し落ち着かなさそう。

「どうしたんだい?」

「ムシューが」

「ムシューが……」

「ムシューが?そういえばまだ姿が見えないね」

陛下はキョロキョロと辺りを見渡します。

と、聞こえる可愛いらしい声。

「へいかー!」

「ん?いっイヴェ君!?」

陛下は思わず声が裏返りました。Romanを歌う冬の貴公子、イヴェールに去年にはなかったであろう胸の膨らみがあったからです。声も幾分高い気がします。

「……どっどうしたんだい?」

かろうじて平静を保ちながらとりあえず突っ込む陛下。

「こんなRomanを体験するのも大事かと思って!生まれ変わったら女の子かもしれない!」

イヴェールの目の輝きは眩しく、陛下はたじろぎました。


「陛下……?こんなイヴェールは嫌いですか……」

敏感にそれを感じとったイヴェールはうっと瞳を潤ませます。

「そっそんなことないよ!す、素敵だよ!イヴェく……イヴェちゃん?」

陛下がにこりと微笑むとイヴェールは途端に元気を取り戻しました。
姫君たちはそんなやり取りを見てはまだ困惑気味です。

頭が少し冷静になってきた陛下はすっかり女の子なイヴェールを眺め、頷きました。

「んーイヴェール、君のRomanを聴かせてくれないか?」

「うぃ、むしゅー」

イヴェールは仰々しくお辞儀をすると、Romanを歌い始めました。いつもと違う、朝と夜の調べ。幾段可憐ではかなく、透き通る歌声。

姫君たちも思わずうっとりしています。


イヴェールが歌い終わると、陛下は大きく拍手しました。

「ハラショー!ハラショー!すごくいいよイヴェちゃん!」

イヴェールは褒められてすっかり照れています。その様子は女の子に違いありません。


「このRomanも格別だなぁ……」

「でしょう?」

盛り上がる(似た者)同志。

「よし!そうと決まったらイヴェちゃんは服を着替えないと!」

予想外の展開に姫君たちはぽかんと見守っています。

陛下はすぐに宮廷絵師兼服飾デザイナーにイヴェールのスカートを準備させました。
それは淡い黄昏色でフリルもあしらわれており、イヴェールによく似合います。

「わぁ!陛下ありがとう!」

イヴェールはきゅるんとした声でお礼を言います。

次に姫君たちの目が光りました。


「ムシュー!次はネイルのデコレイトですわ!」

「へっ?」

「こうなったらむしゅーを可愛いらしく仕上げてみせますっ!」


姫君たちの半ば開き直った、しかし楽しそうな声が弾けます。
手慣れたようにオルタンスは左手を、ヴィオレットは右手をネイルアートし始めました。

その様子を陛下は微笑ましく見守ります。まるで三姉妹のようです。


「できましたわっ!」

満足そうな姫君たち。

「すごい……」

イヴェールは自分の爪を見て呆気に取られました。
薔薇のモチーフや宝石のようなものが沢山ちりばめられています。若干指先が重そうです。
イヴェールは感心したような吐息を漏らし、指先を交互に見比べました。

「ああっ!」
「ムシュー、どうされました!?」

イヴェールの顔が一気に焦り始めます。

「……これではフライングVが弾けない気がするよ……」

「まぁ……」

オルタンスも思わず納得してため息を漏らします。
「大丈夫です、きっと陛下がなんとかしてくれますわっ」
ヴィオレットが根拠のない励ましを送ります。

「そ、そうだね……」

「ああっそうだわオルタンス、メイクもしなきゃ」
「そうねヴィオレット!」

盛り上がってきた双子の勢いは止まりません。
アクセサリーやメイクを存分に施し、まるでお姫様です。

双子の姫君はすっかり女の子になったイヴェールに感嘆しました。見とれる程美しい御主人様、イヴェール。
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