Novel SH
□愛する者と再び繋がる日まで
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「おめでとうイヴェール」
「……サヴァン」
イヴェールは魂が抜けたような声で返事をする。
「そんな浮かない顔して、何事かお悩みかな?」
イヴェールは俯いては顔を上げ、ゆっくり口を開いた。
「双子の姫君たちが……」
イヴェールの視線の先には全く動かなくなった双子がいた。手足は強張り表情は固まっている――そう、人形になっていた。
サヴァンはゆっくり息をつく。言葉を選んで咀嚼する。
「役目を終えたからだよ。姫君たちは《人生》を全うしたのだ」
イヴェールは瞳に哀しみを宿したまま、サヴァンが言ったことを何とか飲み込もうとしている。だがやがて頭を振る。
「……イヴェール。君が此処に居る必要はなくなった。姫君たちが君のRomanを見つけたからね…………これも姫君たちのRomanだよ」
イヴェールはRomanという単語に反応しサヴァンを見つめる。サヴァンにとってイヴェールの気持ちを察するのはたやすいようだ。
「大丈夫、君の感謝の気持ちは姫君たちにきっと届いている。さぁ君もお往きなさい」
イヴェールは人形になった双子をぎゅと抱きしめると美しい声で言った。
「メルシーボクーオルタンス、メルシーボクーヴィオレット」
サヴァンはうむと頷く。双子は人形らしく表情を崩すことはない。
「君は君の地平線を目指して――さぁお往きなさい」