Novel SH

□ワイン対決
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飲みたい、と思ったが吉日。

ミラコン追加公演も無事幕を閉じ、関係者の打ち上げも一段落。久しぶりに迎えるゆっくりした休日だった。

城下の穏やかな日和に僕はンーと伸びをした。


久しぶりにゆったり飲むのもいいな、と思い立ちふと電話をかけ始める。

携帯電話の軽快な動作音……なかなか出ない。

しばらく粘ったあとでやっと相手と繋がった音がした。
「……もしもし?」

おかしいな、返答がない。再度繰り返してやっと主の声が聞こえた。

「……も……しもし……」

「イヴェ……くん?」

「……ん……?」

駄目だ、完璧に寝起きのようだ。ってもう十時半なのだが。

「イヴェくん、おはよう。すまない起こしたかな?」
「……おは…ようご…ざいます……へいか…………いえ…ぃぇ………」

相手の対応にうっすら笑みを浮かべながらとりあえず用件を伝えてみる。
「折角の休日だし一緒に飲まないか?ほら、ワインとか久々に……」

「……ん………そうですね……しばらく…陛下お忙しかったですし…………お招き……ありがとう…ございます…」
「オッケー。じゃ今夜僕の部屋で」


ぷつっと電話を切る。


えと……次はっと……

再び携帯呼び出し音が鳴り響く。今度の相手も素直には出てくれない。相手が携帯の操作に右往左往してる様子が安易に想像できた。

しばらくしてやっと恐る恐るした声が聞こえてきた。
「もし……もし?」
「やぁエレ君。元気かな?追加公演お疲れ会を開こうと思うんだけど、どうかな?今夜僕の部屋で」
「あっ陛下!どうもお疲れ様です!はいありがとうございます、行きます!!!」
「んむ。では待ってるよ〜」

どうやらエレ君はいまだ携帯を使い慣れていないよう。

実は今回更なる円滑な情報交換のために城下住民全員に携帯を持たせたのだ。
イヴェ君もエレ君も操作方法を説明している間目が点になっていた。イヴェ君のほうは優秀な双子がついていて問題ないようだったが……

思い出し笑いをしながら、僕はしまったと思った。
タナ君にも連絡しようとしたが、彼は携帯を持っていなかった……理由に身体的腕の事情で非常に携帯が扱いづらいことがひとつ。これは同じくお付きの二人でカバーできそうだったが、最終的な結果として冥府は圏外だったことが理由。
うむ、残念だったねぇ。
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