**BLEACH小説**

□7月7日
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笹にはいくつもの短冊がかけられていた。


人の願掛けはあまりジロジロと見るものではない。

そう思ったが一つの短冊が目に入った。


■7月7日■


―雛森―?


この短冊にはそう書かれている。

そう、俺の目には―雛森―の文字が映った。

誰が書いた。松本か?



―雛森が早く元気になりますように   日番谷冬獅郎―


「…はぁ!?」

拍子抜けな声を上げてしまった。

「どうしたんです?隊長…あっ!」

俺が笹の近くに立ってるだけであからさまにバツの悪い顔をした松本。

「これは…松本が書いたものだな?」
「隊長に短冊を渡してもこういう事書かないと思って変わりに書いてあげようかなと…」
「余計なお世話だ…ん?」

もう1つの短冊も目に入ったので読み上げてみた。
「…俺の気持ちを雛森に伝えれますように  日番谷冬獅郎…」
「きっと隊長こんな事想ってるだろうなって…」
「余計なお世話だっつってるだろ!!」

「こっちも雛森関係ですねー。えっと何々? 次こそは雛森を護れますように 日番谷冬獅郎…ですって」
「…。」

斑目が読み上げたが最早もう呆れて何も言えやしなかった。

「こっちは、雛森に少しでも認められますように 日番谷冬獅郎。と書かれていますね」
「…。」

今度は斑目に変わって綾瀬川が読み上げた。
またしても何も言えやしなかった。
それは呆れて言えないんじゃなくて恐らく図星なのだろう。
どれもこれも心底そう想ってるものばかりだった。

「どうです?なかなか近い願いとかあるでしょう?」



「…松本…」

「はい?」



「これは何だ…?」

「え?あたし他に何か書きましたっけ?」


「読み上げてやろうか? ―身長が伸びますように 十番隊隊長 日番谷冬獅郎―」

「あーあ、だから止めておいた方が良かったんですよ」

斑目がそう呟いたのを聞いて、俺が家に入る前に玄関前で聞こえた会話がこの短冊についてだったという事を把握した。

「こ、これは隊長が本当に悩んでそうだったんであたしからもお願いしてあげようかなと思って…」
「だからそれが余計なお世話だと言ってるんだ!!!」
「た、隊長〜ご近所迷惑ですよ?あんまり大声出さないで下さい」
「テメェが言うな!!!」

俺がそう叫んだ時「夕飯の用意が出来たよー!」という井上の声がした。
松本と斑目、綾瀬川が井上の方へと歩いていくので俺も後を追って井上の方へと一歩足を進めた。

しかし何を思ったかふと立ち止まり笹を見る。



―もう一度ギンに会いたい―



そう書かれた短冊が目に入った。

その短冊の下部が少し濡れていた。


「アイツ…泣いたのか」


仕方ねぇ。アイツが勝手に短冊に書いた俺の願い事に関しては大目に見てやるか。


例えば、もし


俺がふと行方をくらましたら…
アイツは…雛森は―。
どうするだろうか。
泣いて俺の名前を呼んでくれるのだろうか。

…いや、アイツの事だ。
何日も帰ってこない弟の家出を探すかのように
泣いて探してくれるだろう。


短冊に願掛けをするならば俺はこう書くだろう。


―どうかもう一度、あの頃のような平和な日常が訪れますように―

今日家に戻るまで、日が暮れるまで夕日を見ていて思い出した、俺が幼少の頃のあの頃のような平和な日常が戻るように…。




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