**BLEACH小説**
□7月7日
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綾瀬川が七夕の説明をしているのを
俺は全て一語も聞き漏らさず聞いた。
正直長い話だなと思っていたが、まぁ聞けなくないかなと思える話だった。
■7月7日■
「ったく、よくそんな長い話覚えれたな〜」
綾瀬川の説明が終ると呆れるぜ、と言わんばかりにため息交じりで斑目が言った。
「井上さんが言ったことを僕はちゃんと聞いてたからね。美しくかつ切ない魅力的な話だね」
「現世では七夕っていうイベントがあるんですって」
「ふーん…」
「紙にお願い事を書いて笹に飾ると願いが叶うんだよ!冬獅郎くんも書いてみたら?」
紙とペンを差し出され「日番谷隊長、な?何遍も言わせんなよ…」と言いながら受け取った。
「織姫!アンタの彦星は誰なのよ?一護とか?」
「え!?そそそ、そんな!黒崎くんは私の彦星なんかじゃ…」
松本が井上を茶化す。
「隊長は?どんなお願いをするんですか?」
「こんなくだらねぇことで願いを叶えられたら苦労なんてしねェよ」
「そんな事ないよ!願い事…私は一つ叶ったもん」
―黒崎くんとお話が出来ますように。仲良くなれますように―
これは朽木さんが現世に来る前の7月7日に願掛けしたものだった。
だけど叶わない願いもあった。
―お兄ちゃんといつまでも一緒にいられますように―
いつまでもというのは決して無理な事。
だけど死ぬにはまだ早すぎだよ。お兄ちゃん…。
だから自分でも七夕にする願掛け全てが叶うわけじゃないとわかっている。
でも…少しでも希望を持っていたくて願う。
「きっと叶うよ。冬獅郎くん」
「…織姫?」
少し様子がおかしくなった井上を心配して少し歩み寄る松本。
「さぁっ!冬獅郎くんも帰ってきたことだしご飯作ってくるね!」
空元気なのか否か。
松本が二、三歩井上に近寄ると急に表情が明るくなり、声さえも明るくなった。
「夕飯の支度をしている間、冬獅郎くんは願い事書いててねー!」
手を振られたが俺は手を振り返すことなく視線を短冊に落とし、井上は夕飯の支度をするため台所へと向かった。
「斑目と綾瀬川は何か書いたのか?」
「とりあえず書きましたよ。俺は【ずっと十一番隊所属でいられますように】と」
いかにも斑目らしいなと思える願いだった。
そんなに十一番隊がいいかとも思ったが本人がその隊がいいと言うんだから
他人がどうこう言う話の問題じゃないのだろう。
「僕は…」
『いつまでも美貌が保てますように』
何という偶然だろう。
俺と松本と斑目の声が揃った。
それだけ綾瀬川の願う事などわかりきっている事だった。
「…。ま、まぁそういう事ですよ…」
綾瀬川は周りに台詞をとられて悔しそうだった。
「松本は?」
「え?あたしはですねぇ〜…」
口篭もる松本を見ては何かあるなと勘付いた。
「別に何かあるわけじゃないですけど…その、願掛けを言葉にしてしまうと叶わなくなるかなと思って言いたくないんですよ」
「ふーん」
不自然に焦り出す副官を横目に適当に相づちを打った。
特に他人の願掛けなんて聞かなくてもいいと思い、深く聞かなかった。
「俺、今願掛け言っちまったぞ!?」
どうしよ〜とギャ―ギャ―騒ぐ斑目を、うるせぇ奴だと横目で見ては笹の方へと歩み寄る。
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