◇Novel〜2〜
□クリスマスの夜に
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腰をさらに引き寄せて、オズは言った。
そのオズをギルバートは恥ずかしげに見つめ、そっと肩口に頭を預ける。
「坊ちゃんも、僕の自慢ですよ」
「そう?」
「はい。自慢のマスターです」
「……あ、そういうこと」
気抜けした表情のオズに、ギルバートはくすりと笑った。
先ほどの、ギルバートがドキドキして仕方なかった男の表情とは違う、年相応の不貞腐れた表情。
こんな表情もギルバートは好きだった。いや、オズのことで本気で嫌だと思うことなどギルバートにはない。
「坊ちゃん?」
「なに?」
「……坊ちゃんは自慢のマスターで、恋人、ですよ」
言葉にしたら照れくさくて、ほんのりと赤い顔で告げたギルバートに、オズは心底驚いた表情をしてー…、すぐに笑顔を浮かべた。
表情だけでなく、雰囲気全てで「嬉しい」と示してくれる、滅多に見れない笑顔で。
「ねぇ、ギル。俺ねぇ、サンタなんて信じてないよ。正体知ってるしね」
オズの場合父親ではなく、叔父であるオスカーが“サンタ”だ。
これはギルバートにとっても同じで、二人ともその事実を知っているため(オスカー本人はまだ隠しているつもりみたいなので、信じているふりをしているが)、ギルバートはオズの言葉に小さく頷いた。
「でもさ、今年はサンタがプレゼントくれるような気がする」
「坊ちゃんの欲しいものって、なんなんですか?」
おそらくそれとなく欲しいものは聞き出されただろうオズが、いないと分かっているサンタに貰えると思っているものはなんなんだろう? 首を傾げるギルバートに、オズは柔らかい笑みを見せて、唇をギルバートの耳に寄せた。
「ギルが欲しい」
「……!」
オズの言葉にギルバートの頬が染まり、ついでに瞳まで潤ませる。
それは、オズの言葉をのんだ証。
それから、この先に対する期待。
「……くれますよ、きっと」
「うん」
微笑んだまま頷いたオズはそっとギルバートの頬に触れた。
ぴくり、とギルバートは身体を跳ねさせ、オズを見つめる。
視線が合わさると同時に、どちらともなく唇が重なった。
遠くから聴こえる鐘の音が、サンタの訪れをつたえているー…