◇Novel
□水平思考
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「・・・あっんッやぁッ!ブレイク、もぉ・・・」
激しく打ちつけられるその快楽に耐えられないのだろう。金糸の彼はポロポロと涙を零しながら、限界を訴え、それでも自ら悦楽を求めてやらしく腰を揺らしていた。
「オズ」
彼の名を呼び、その紅潮した頬に手を添え、視線を絡ませると、オズは自ら顔を寄せ、私に口付けた。どちらともなく、舌を絡めあい、薄く息をつぐたびに混ざり合った唾液が零れていく。彼の体を抱くようにすると、オズも私の頭に手を添え、甘えたように喉を鳴らす。
激しく軋むベッドのように、彼の体を激しく揺さぶる。
まるでその狂おしい感情をぶつけるかのように。
「あ、ん・・・やあぁ・・・ッ!」
甘ったるい嬌声を上げて、オズは張り詰めた自身から白濁を飛び散らせた。衝動に私自身を締め付けてくるのにまかせ、彼の奥に熱い奔流を叩きつける。オズは一度ビクンッと体を痙攣させると、そのままくずおれてしまう。いまだに慣れない激しい情事に気を失ってしまった彼を抱き、涙に濡れた目元を拭う。
オズの恋が叶わぬことを知り、私はその隙間に付け込んだ。
オズが鴉のことが好きだというのは、傍から見ていてすぐに気が付いた。そして、黒髪の彼もオズが好きだということも。
一言どちらかが「好き」と言えば、始まるはずの恋愛。同時に一生伝わらないであろう互いの気持ち。
いつまでそんな、ムダな想いを抱えてる必要がある?
オズの事を一番よく理解いているのはこの私なのに。
だからこそ、オズが鴉に向けるあの視線が癪に障り、彼をベッドに突き飛ばしたのも、まるで昨日のことのように鮮明に覚えている。
その時のオズは何の感情も表に出さず、ただ静かに、私の事を見つめて微笑んでいた。オズ自身、鴉への叶わない想いに疲れきっていたのだろう。そんな彼の体にその時だけ、だけど全てを忘れる事の出来る深い深い、溺れるような快楽を刻みつけてやれば、あとはもう全てが泥沼だった。
自ら快楽を求め、声が嗄れるまで鳴き、彼の唇は「ブレイク」と私の名を刻み、オズの全てを私で満たして。
幸せなはずなのに。
本当に欲しいモノは、どうやって手に入れたらいいのだろう。
体を重ねるたびに、拡がっていく空虚感。
それは"体だけ"の関係。
どうしてオズは私の事が好きではないのだろう。
どうして私はオズでなければいけないのだろう。
こんなにも、こんなにも彼の事を愛しているのに。どうして、なんでキミは。
そんなにしてまで、鴉に執着するんだ。
グチャグチャな想いをこめて、小さな寝息をたてる彼を強く抱き締める。
夜の空気は、何時までも冷え切ったままだ。